ども♪マコトです。
ほそぼそと投資をしています。
今回気になった本があったので読んでみました。
その本はシャルマの未来予想。
副題が刺激的でこれから成長する国 沈む国。
シャルマ曰く、日本は平均のようです。
不確実性が増している現代社会では、将来予想はこれまで以上に難しくなっている。
良い意味でも、悪い意味でも、今後数年先に世の中が大きく変わっていくと想像されるが、どのように変わっていくかを予想することは簡単ではない。
本書は難しさが増している将来予測、特に国家の経済成長の予測を題材とした書籍である。
金融危機後に起きている国家の衰退とその背後にある要因の変化を著者の独自の視点で分析し、その結果から今後経済成長する国はどこか、経済成長できない国はどこかについて評価している。
本書の著者は、モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントの新興市場部門・部門長を努め、チーフ・グローバル・ストラテジストとしても活躍しているルチル・シャルマ氏である。
彼の最初の著者である「ブレイクアウト・ネーションズ:大停滞を打ち破る新興諸国」は世界的に注目された書籍であり、ウォールストリート・ジャーナル紙、ファイナンシャル・タイムズ紙などへの寄稿も多数ある。
07年にダボスの世界経済フォーラムより世界で最も優れた若手リーダーの1人に選出され、世界でも注目されているストラテジストの1人であると言ってよいであろう。
本書はシャルマ氏が16年6月に出版した最新の書籍の翻訳書である。
彼が主張する10の指標はユニークである。
本書からではその根拠を十分に確認することはできないものの、長年の経験と分析から独自に考案した10の基準とその背景について、定性的に解説がされている。
そして、執筆時点での判断として、どのような国の経済が発展に向かっているのか、それても衰退に向かっているのかを判断している。
その具体的な10の基準は以下の通りである。
まず、1点目の基準は「人口構成」で、過去に現場の労働者の供給が減少したことにより経済成長が低下したことを例として、生産年齢人口が増えているかが重要な要素になり、ロボットが労働人口減少に対する救世主になり得るとしている。
2点目は「政治」で、経済危機が改革者を生み、改革者が経済発展をもたらすが、その改革者はやがて独裁者に変わって、再び危機の温床になるという政治サイクルが生まれる。
多くの改革者が俗物に変わり、この変貌が重要な基準となる。
3点目は「格差」で、技術革新で大成功した億万長者(良い億万長者)と資源開発の利権取得や相続などから生まれた億万長者(悪い億万長者)のどちらの億万長者が多いかが一つの基準になるとしている。
お金持ちを見ればその国の将来が見えてくる。
4点目は「政府介入」で、たとえば国家の財政氏支出の対GDP比率を見て財政資金が生産的な投資に向かっているか、単なる人気取りのバラマキに使われているかも重要な要因となる。
政府が経済への介入を減らし、財政支出を生産的な投資に絞り込めているかも重要な点であるとしている。
5点目は「地政学」で、経済的に価値のある拠点となるためにその地域の利点を最大限に活かす努力がなされ、地理的なスイートスポットになっているかも重要な要因であるとしている。
6点目は「産業政策」で、少なくとも現時点では国の将来を評価する基準は依然として製造業であり、投資が高水準でかつ、上昇傾向にあることは良いことであるとして、投資の対GDP比率は増えているか、減っているかが重要であるとしている。
7点目は「インフレ」で、これまでの経験から消費者物価指数で見た高インフレは悪い兆しであり、低いインフレは良い兆しであつことと、それに加えて資産価値、特に、住宅価格の上昇率が経済成長率を上回り続けていないかが重要なシグナルになるとしている。
8点目は「通貨」で、通貨が割安か割高かは経済の見通しを予測する際に重要な要因となる。
更に、経常収支の赤字が対GDP比で3%以上となり、これが5年連続なら警戒が必要であるとしている。
9点目は「過剰債務」で、債務拡大と経済成長の歩調がそろっていれば健全と言えるが、債務の伸び率が重要で、債務拡大は「ほどほど」がよいとしている。
最後は「メディア」である。メディアはこれまでのトレンドから将来を予測するため、多くの場合、高成長の時間はその後僅かしかなく、メディアが注目している間は危険な状態であり、逆にメディアから忘れられた存在となったときこそ経済成長の可能性が高いとしている。
本書では、まとめとして、現行を執筆している時点での上記評価基準に照らして、各国の「優秀」「平均」「劣等」の3つのランクで評価している。
現時点で評価すると、結果はかなり変わってくる可能性が高いものの、これまでにはないアイデアを取り入れた評価の尺度は面白い。
比較的短期であっても国家の経済成長を相対的に予測することですら難しい作業であるが、ある程度の予測ができれば、投資成果の改善に大きく寄与することが期待できる。
本書をその手段の一つと位置づけることは表面的には間違っていないであろう。
しかし、本書を単なる予測のための書籍とすることは本書を適切に評価していないのではないか。
本書には、国家としてのあるべき姿、方向性が至る所に示されている。
これらの点は広い意味での為政者にとっても、国民にとっても重要なことである。
単なる「当てっこ」をしているのではないという視点で本書を読んでいただきたい。
投資に関心を持たれている方、日本の将来に不安を持たれている方や世界情勢に興味を持たれている方など、多くの方に読んできた抱きたい書籍である。
シャルマの未来予測 これから成長する国・沈む国 /東洋経済新報社/ルチル・シャルマ | ||||
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