ども♪投資が好きなFP&証券アナリストのまことです。
遅ればせながら敗者のゲームを読みました。
投資を20年近くやっていても読んでいると、なるほどな~と思うことが多々ありました。
備忘録として残しておこうと思います。
「勝者のゲーム」と「敗者のゲーム」の決定的な違い
何十年も前ならこれらの方法は十分機能した。だが、機関投資家の大多数が市場平均以上の成績をあげられるという前提は、残念ながら正しくない。
なぜなら、機関投資家が市場そのものだから、機関投資家全体としては、自分自身に打ち勝つことはできないのだ。
機関投資家は、取引所の取引の99%を占める。運用機関の数が膨大で、能力も高く、顧客のために質の高いサービスを提供するからこそ、資産運用が敗者のゲームとなったのだ。
アクティブ運用の手数料などのコストや、大型取引による売買価格への影響などを差し引けば、運用機関の成績は今後も市場平均を下回るだろう。
個人投資家の運用成績の場合は、さらに悪い(デイトレーダーに至っては、もっとひどい。やめたほうがいい)。機関投資家の運用を「勝者のゲーム」から「敗者のゲーム」に変えたものは何なのか?
その分析の前に、まずこの二つのゲームの違いを検討してみよう。
TRW社の著名な科学者サイモン・ラモは、「勝者のゲーム」と「敗者のゲーム」の決定的な差について、『初心者のための驚異のテニス』という本で明らかにしている。
すなわち、テニスには2種類のゲームがあり、一つはプロおよび天才的アマチュアのゲームで、もう一つはその他大多数のゲームである、というのだ。
いずれのゲームもプレーヤーは同じ道具、服装、同じルールに従うが、この二つは全く異なるゲームである。統計分析の結果、ラモ博士は次のように要約する。
「プロは得点を勝ち取るのに対し、アマはミスによって得点を失う」
プロテニスでは、最終結果は勝者の行動によって決まる。プロのテニスプレーヤーは長いラリーの末、強力で正確なウイニングショットを放ち、敵の手の届かない所へ打ち込んで勝利をつかむ。こうした一流のプレーヤーはめったにミスをしない。
一方、アマチュアのテニスは、これとは全く異なる。素晴らしいショットとか、長いラリーはなかなか見られない。ボールはしばしばネットにかかり、ラインの外に出る。ダブルフォルトも珍しくない。
アマチュア・プレーヤーは敵を打ち負かすことはほとんどなく、いつも墓穴を掘って終わる。得点の多くは相手のミスによるものだ。試合に勝つのは、相手の失点が多いからだ。
ラモ博士は、この仮説を証明するためにデータを集めた。普通の得点計算方法の代わりに、自ら勝ち取ったポイントとミスによるポイントを計算したのだ。
これによると、プロのテニスでは、ポイントの80%が自ら勝ち取ったものであるのに対し、アマチュアのテニスでは、ポイントの80%が敵失によるものだった。
二つのゲームは基本的に正反対なのだ。
プロのテニスは勝つためのプレーで結果が決まる「勝者のゲーム」であるのに対し、アマチュアのテニスは敗者のミスによって決まる「敗者のゲーム」なのである。
軍事問題を専門とする歴史家サミュエル・エリオット・モリソン提督が、『戦略と妥協』で同様の指摘をしている。
「戦争でミスは避けられない。軍事的決定を行う際には、敵の戦力と計画を推定するが、それは間違うことも多い。よく考え抜かれた作戦も決して完璧ではなく、しばしばあまりうまくいかない」。
「戦争では他の条件が等しければ、戦略上のミスを最少にする側が勝つ」。
つまり、戦争は究極の「敗者のゲーム」なのだ。
もう一つの例がゴルフだ。トミー・アーマーは『ベスト・ゴルフ』の中でこう述べている。
「勝つための最善の方法は、ミスショットをできるだけ少なくすること」。
これにはすべての週末ゴルファーが頷くことだろう。
「勝者のゲーム」は、絶対的勝利に惹かれるプレーヤーが集まりすぎるために、しばしば自己崩壊する。それはゴールド・ラッシュの惨めな結末にも現れている。
同じように、資産運用と呼ばれる「マネーゲーム」も、最近数十年で「勝者のゲーム」から「敗者のゲーム」へと変わった。証券運用の世界で根本的な変化が起きたからだ。
市場より高い成果をあげようと懸命に努力する機関投資家が多数現れ、市場を支配するようになった。この変化がすべての原因である。全員が同じ情報を共有し、巨大なコンピュータを駆使し、市場に勝とうとして全力をあげる。
今やアクティブな運用機関は、初めて市場に顔を出す金融機関やアマチュアと競争しているわけではない。彼らは他の優秀な専門家と「敗者のゲーム」を戦い、そこで勝ち残る秘訣は、相手より失点をできるだけ少なくすることなのだ。
プロのファンド・マネジャーがきわめて優秀であるからこそ、個々のマネジャーは彼らの総体である市場に勝つことができない、ということだ。
投資の4つの基本原則
- 投資の最大の課題は、株式・債券・不動産などへの長期的な資産配分の決定である。
- 長期的な資産配分の決定に際して考慮すべき点は、将来何にその資金を使うのか、いつ資金が必要になるか、決めたとおりに守り抜けるか、という点である。
- 資産を種類ごとに幅広く分散する。 暴落は突然起きる。
- 決めたことを一貫して忍耐強く実行する。上昇相場は相場の最悪期に起こる。 一喜一憂した時の損失は大きい。「方針をきちんと立て、方針どおりに行動すること」。だからこそ、①の資産配分方針が重要である。
投資家が避けるべきリスク
「我々自身はそうしたことを起こさないようにしよう」というジョン・F・ケネディの言葉は、すべての投資家にあてはまる。 不要なリスクを取って自ら不幸な結果を招いてしまうことが多いからだ。 投資家が避けるべきリスクを次に列挙しよう。
- むやみに頑張りすぎる
- リスクを回避しすぎる (債券や短期資産に偏りすぎる)
- 忍耐力の不足・・・1年で10%上がる投資の1ヵ月の平均上昇率は1%にも満たない。
1日単位の上昇率はほとんどゼロに近い。 したがって、毎日の株価の動きを気にしても意味がない。
ところが実際には、毎日欠かさず株価をチェックする投資家は少なくない。
株価は、四半期に一度見れば十分だ。 5~10年に一度以上投資決断を見直していたり、年に一度以上売買判断をしているなら、それは多すぎる。 - 投資信託に投資する場合、10年に1回以上入れ替える・・・投信の入れ替えコストは高い。
個人の投資リターン実績は、その投信自体のリターンを大幅に下回る。
なぜなら、一般に投資家は、好成績、すなわち基準価格の高い時に投資し、成績不振になる安値で売るからだ(このために利益の3分の1を失っているという研究結果もある)。
その結果、辛抱強く待っていれば得られたはずのものを捨てている。 - 過大な借り入れ・・・倒産件数の4分の3は過大債務によって生じる。
借り入れは思惑どおりの結果を生むことは少なく、多くの場合、重い足かせになる。 - 単純に楽観的・・・ほかの分野はともかく、投資においては、楽観的であるより、客観的で現実的であることのほうがはるかに重要だ。
- プライドが高い・・・投資家が自分の投資能力と投資成果をしばしば過大評価することは、多くの研究が示すとおりだ。 自分に対してさえ間違いを認めず、頑固に自説を曲げようとしない。
ことわざに言うように、「株はあなたが持っているとは知らない」。
そして、あなたのことなど気にも留めていない。 - 感情的になる・・・株価が上がれば笑い、下がれば泣く。
株価変動が激しいほど、感情の揺れも激しくなる。
プライドと恐れ、欲望と喜び、心配などの感情は、投資の最大の敵」である。これらの感情に振り回されていては 「ミスター・マーケット」の思うつぼだ。
それなのに、ほとんどの人が「ミスター・マーケット」の術中にまんまとはまってしまう。
最大の問題は、市場変動に耐えて株式を長期保存すれば、そのリターンが債券を上回るか、ということではない。
投資家が期待リターンを実現できるほど、株式を長期間保有し続けられるか、ということだ。
つまり、私たちの問題であって、市場の問題ではない。
私たちがどう市場を認識し、それにどう反応するかという問題だ。
恐るべきインフレーション
さて、投資をする人にとって恐るべき、そしてあまりに過小評価されている共通の敵がいる。
インフレーションだ。
インフレは、誰にでも、特に引退後のシニア層に打撃を与える。
最近はあまりインフレが起きないので、ないものと考えがちだが、インフレの力は本当に恐ろしい。
連邦準備銀行は、現在2%のインフレ目標を掲げているが、インフレを完全にコントロールすることはできないし、3~4%のインフレになってもおかしくない。
長い目で見ると、インフレは大きな問題であり、日々の株式の価格変化やサイクルによる変化よりずっと深刻だ。
一般的に許容される年率2%のインフレが続けば、購買力は35年で半減する。
年率5%のインフレが続けば、購買力は14年以内に半減し、次の14年間でさらにその半分になる。
現在の平均寿命は80歳代だから、これは重大問題だ。
引退後、インフレによる購買力の減少を埋め合わせる収入がない場合には、なおさらである。
さらに、私たち個人投資家には、 個人としての責任がある。住宅の購入、子供の教育、老後の生活費用、災害などへの備え、想定以上に長生きするリスク、年老いた親戚への医療費の支援、自分の学んだ学校などへの寄付などだ。
また、子供や孫のため、何がしか遺産として残したいと願うだろう。
ほとんどの人にとって進歩とは、子供の世代の生活水準が上昇することである。
問題はこうした負担額が時として際限のないものになりかねないことだ。
特に人生の終末期にかかる医費は、蓄えより多額になることもある。
今後の人生において、どれくらいのお金が必要になるかを明確に意識している人はほとんどいない。
しかし、この「支払い責任」を具体的に検討してみよう。
誰に対して責任があるか、その目的は何かを明確にする必要がある。
子供の教育にいくら準備するつもりなのか?
大学進学はお金がかかる。
最近では大学院進学も一般的になってきているが、これまた高い。
教育費を負担した後で、子供の最初の住宅取得を補助するつもりなのか?
彼らの事業や歯医者になるための勉強を経済的に援助するか? あなたの両親、兄弟姉妹その他親戚へ経済的支援をどうするか?
こうした必要総額と支出時期について、確認しておかなければならない。
投資をするには、まずお金を貯める必要がある。
貯蓄がなければ、投資はできない。
どのようにお金を貯め、どうすれば賢く投資できるかを考えてみたい。
投資の10戒
- 貯蓄する。 そしてそれを自分の将来の幸せと安定、子供の教育のために投資する。
- 相場の先行きに賭けてはならない。
もしあなたが衝動に駆られ、どうしても相場を見ながら売買するというなら、相手はプロであることを自覚すべきだ。
投資額はラスベガスでプロを相手にギャンブルする際の金額程度に抑えたほうがよい 勝負の結果を正確に記録していけば、あなたもすぐに降りたくなるだろう。 - 税務上有利という理由で動いてはいけない。
そうした商品は投資対象として魅力はない。
企業の税務上の損金を節税目的で商品化したものは(訳注:日本にはほとんどないが、証券会社の手数料を増やすだけだ。
ただし例外もある。自分の経済状況と、めまぐるしく変わる税制に見合った資産管理計画を作成すること。
何らかの理由で株を手放さなければならない時には、低い簿価の特定寄付を行うこと。
また、条件に合うならIRA(非課税の個人退職貯蓄口座)を開設し、401(k) プランに毎年最大限拠出すること。
401(k)口座以外に資産がある場合は、資産全体の整合性を考えたほうがよい。
所得税を抑えるには、 債券 債券ファンドを非課税口座に組み入れる。 - 自分の住宅を投資資産と考えてはいけない。
住宅は家族の生活の場であり、それ以上のものではない。
多くの人が2008年の住宅価格の暴落で実感したように、住宅は金融的な意味で優良な投資対象とは言えない。
しかし、家族の幸せのためには意味がある。 - 商品取引は考えものである。
コモディティ取引は投機だ。
経済的付加価値を生まない以上、投資とは言えない。 - 証券会社と投資信託会社の担当者に気をつけること。
多くの場合、素晴らしい人たちだ。
しかし、彼らの仕事は、あなたを儲けさせることではなく、あなたから儲けることである。
とても良心的で、長年担当した顧客の身になって、質の高い仕事をしてきた人も少なくないが、あなたの担当者がそうとは限らない。
立派な担当者もいるが、なかなかそうはいかないのが実情だ。
一般に、一人の証券会社の営業担当は、資産残高の合計が500万ドル程度の顧客を約200人抱えていると言われる。
この営業担当が年間10万ドル稼ぐには、売買手数料収入として30万ドルを必要とする。
これは、担当する顧客の資産合計の6%にあたる。
これだけの額の手数料を生み出すには、担当者はあなたに何が必要かを考える暇はない。
資金を回転させ続けなければならず、それはあなたの資金である。 - いわゆる新金融商品に投資してはならない。
この手の商品のほとんどは投資家に保有されるためではなく、投資家に売るために設計されている。 - 元本や利息が安全だとか、リスクが少ないという理由だけで、 債券に投資してはならない。
債券価格も株式と同様に変動し、さらに債券は、 長期運用にとって真のリスクであるインフレに弱い。 - 長期の投資目的と投資方針、資産計画を書き出し、それに沿って行動すること。
最低でも10年に一度、できれば毎年それを見直すこと。 - 直感で投資してはならない。
うまくいって有頂天の時は、大火傷が待っていると思ったほうがよい。
落ち込んだ時は、夜明け前が一番暗いことを思い出そう。
そして、何もしないことだ。 運用に売買は不要。 売買はしなければしないほどよい。
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