米国の経済動向を知るためには、ISM製造業および非製造業景気指数(PMI)は欠かせない指標です。
これらの指数は、経済活動の活発度や景気の方向性を示す重要なデータであり、多くの投資家や経済アナリストに注目されています。
最新のISM指数がどのような意味を持つのか、そしてこれからの経済にどのような影響を与えるのかを考察してみましょう。
米国 ISM製造業購買担当者景気指数
2024年7月の米国ISM製造業景気指数(PMI)は46.8で、前月の48.5から1.7ポイント低下し、4か月連続の縮小を示しました。この指数は、過去21か月のうち20回縮小を示しており、米国製造業は困難な状況が続いています。
主要指標の詳細
- 新規受注指数: 47.4(前月比-1.9ポイント)
- 生産指数: 45.9(前月比-2.6ポイント)
- 雇用指数: 43.4(前月比-5.9ポイント)
- 供給者納期指数: 52.6(前月比+2.8ポイント)
- 在庫指数: 44.5(前月比-0.9ポイント)
- 価格指数: 52.9(前月比+0.8ポイント)
全体的な経済活動は51か月連続で拡大していますが、製造業の指標は依然として50を下回っており、収縮を示しています。これは、需要の低迷、供給チェーンの混乱、及び雇用減少が続いていることを示唆しています。
詳細な分析
新規受注と受注残の収縮
新規受注指数は47.4で、前月の49.3から1.9ポイント低下し、依然として収縮領域にあります。受注残指数も41.7で、6月と同じく収縮を続けています。
生産と雇用の収縮
生産指数は45.9で、前月の48.5から2.6ポイント低下し、収縮を示しています。雇用指数も43.4に低下し、5.9ポイント減少しています。
供給者納期と在庫の状況
供給者納期指数は52.6で、納期が遅延していることを示しています。これは、経済改善と顧客需要の増加が影響していると考えられます。在庫指数は44.5で、前月比0.9ポイント減少しています。
価格と輸出入の動向
価格指数は52.9で、前月の52.1から上昇し、原材料価格の上昇を示しています。輸出入指数も依然として収縮領域にあり、新規輸出受注指数は49.0、輸入指数は48.6となっています。
業界別の状況
成長を報告した業界: 印刷関連活動、石油・石炭製品、その他製造、家具関連製品、非金属鉱物製品。
収縮を報告した業界: 鉄鋼、プラスチック・ゴム製品、機械、電気機器、輸送機器、金属製品、食品・飲料・タバコ製品、木製品、紙製品、化学製品、コンピュータ・電子製品。
全体として、米国製造業は引き続き困難な状況に直面しており、需要の低迷、生産の減少、雇用の減少が続いています。詳細はISM公式サイトをご覧ください。
まとめ
2024年7月の米国ISM製造業景気指数(PMI)は46.8で、4か月連続の縮小を示しました。新規受注指数は47.4、生産指数は45.9、雇用指数は43.4、供給者納期指数は52.6、在庫指数は44.5、価格指数は52.9でした。全体的に、需要の低迷、生産の減少、雇用の減少が続いており、製造業は引き続き困難な状況にあります。
米国 ISM非製造業購買担当者景気指数
2024年7月の米国ISMサービス業景気指数(PMI)は51.4%で、サービス業の拡大を示しています。前月の48.8%から2.6ポイント上昇しました。
価格指数は57.0%で原材料価格の上昇を示し、在庫指数は49.8%で縮小を示しています。サービス業は、48ヶ月中47回拡大を続けています。
主要指標
- ビジネス活動指数: 54.5%(前月の49.6%から4.9ポイント上昇)
- 新規受注指数: 52.4%(前月の47.3%から5.1ポイント上昇)
- 雇用指数: 51.1%(前月の46.1%から5.0ポイント上昇)
- 供給者納期指数: 47.6%(前月の52.2%から4.6ポイント低下)
価格と在庫
- 価格指数: 57.0%(前月の56.3%から0.7ポイント上昇)
- 在庫指数: 49.8%(前月の42.9%から6.9ポイント上昇)
その他
新輸出受注指数: 58.5%(前月の51.7%から6.8ポイント上昇)
輸入指数: 53.3%(前月の44.0%から9.3ポイント上昇)
受注残指数: 50.6%(前月の44.0%から6.6ポイント上昇)
詳細な分析
全体的な傾向 2024年7月のサービスPMIは51.4%で、サービス業の拡大を示しています。前月の48.8%から2.6ポイント上昇し、経済の回復基調が見られます。この拡大は、特にビジネス活動、新規受注、雇用の各指数の大幅な改善によるものです。ビジネス活動指数は54.5%、新規受注指数は52.4%、雇用指数は51.1%に上昇しています。
ビジネス活動 ビジネス活動指数は54.5%で、前月の49.6%から大幅に上昇しています。これは、サービス業全体の活動が活発化していることを示しています。特に、エンターテイメント、宿泊・食品サービス、建設などの業界での活動が顕著です。
新規受注 新規受注指数は52.4%で、前月の47.3%から5.1ポイント上昇しています。この増加は、顧客からの需要が増加していることを示しており、特に公共行政、金融・保険、運輸・倉庫業での新規受注が増加しています。
雇用 雇用指数は51.1%で、前月の46.1%から5.0ポイント上昇し、雇用の増加を示しています。これは、企業が新たな人材を雇用し、労働力を拡充していることを反映しています。特に、医療・社会支援、公共行政、運輸・倉庫業での雇用が増加しています。
供給者納期 供給者納期指数は47.6%で、前月の52.2%から4.6ポイント低下しています。これは、供給者からの納品が以前よりも速くなっていることを示しています。供給チェーンの改善により、商品やサービスの供給がスムーズになっています。
価格 価格指数は57.0%で、前月の56.3%から0.7ポイント上昇しています。これは、サービス業における原材料やサービスのコストが増加していることを示しています。企業はこの価格上昇に対応するためにコスト管理を強化しています。
在庫 在庫指数は49.8%で、前月の42.9%から6.9ポイント上昇しています。これは、企業が在庫管理を改善し、需要に応じた適切な在庫レベルを維持していることを示しています。
業界別パフォーマンス
成長を報告した業界: 芸術、娯楽、レクリエーション、宿泊・食品サービス、鉱業、建設、企業管理支援サービス、運輸・倉庫、公共行政、金融・保険、医療・社会支援、公益事業
縮小を報告した業界: 農業、林業、漁業、不動産、賃貸、リース、卸売業、小売業、専門的・科学的・技術サービス、情報、教育サービス、その他サービス
まとめ
2024年7月のISMサービス業景気指数は、サービス業が回復基調にあることを示しています。特に新規受注とビジネス活動が大幅に改善され、雇用も回復の兆しを見せています。一方で、供給チェーンの改善が続いているものの、価格上昇や在庫縮小の課題も依然として存在します。
グラフ
下落が緩やかになっているため、ソフトランディングシナリオ継続です。
米国ISM製造業景気指数は回復傾向を見せていたものの、4月から再び下落基調。
ISM非製造業購買担当者景気指数は7月の数値は51.4%と50%を上回りましたが、3ヶ月移動平均を見る限りでは横ばいです。
色が薄い線が実数。色が濃い線が3ヶ月移動平均。
Febウォッチ
米連邦準備制度理事会(FRB)の元エコノミスト、クラウディア・サーム氏が考案した、いわゆる「サーム・ルール(失業率の3カ月移動平均が過去12カ月の最低値から0.5ポイント以上上昇した場合に景気後退入りを仮定)」が意識され始めています。
Febウォッチは9月に0.5%の利下げ予想が優勢となっています。
一部報道では緊急利下げの可能性も示唆しています。
ただ、雇用統計後のクラウディア・サーム氏の発言などを見ると、景気後退の瀬戸際だけど、景気後退はメインシナリオではないと言っていました。
市場は過剰に動きすぎだと思います。
以下で、雇用統計の分析とクラウディア・サーム氏のコメントをまとめています。
有名なエコノミストは市場をどのように見ているのか、チェックしてみてください!
・2024年7月の雇用統計を読み解く:失業率が4.3%になり、サーム・ルールに接触
また、サームルールについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
ISM非製造業購買担当者景気指数の発表後
雇用統計発表後
2024年7月の米国ISM景気指数およびISMサービス業景気指数のまとめ
米国ISM製造業景気指数(PMI): 2024年7月の製造業PMIは46.8%で、前月の48.5%から低下し、4か月連続で縮小しています。特に新規受注指数は47.4%、生産指数は45.9%、雇用指数は43.4%と、いずれも縮小を示しています。供給者納期指数は52.6%で、供給の改善が見られますが、全体として製造業は低迷しています。
米国ISMサービス業景気指数(サービスPMI): 2024年7月のサービスPMIは51.4%で、前月の48.8%から上昇し、サービス業の拡大を示しています。ビジネス活動指数は54.5%、新規受注指数は52.4%、雇用指数は51.1%といずれも改善しています。供給者納期指数は47.6%で、供給チェーンの改善が見られますが、価格指数の上昇が課題となっています。
株価への影響
製造業PMIが46.8%と低下していることから、製造業セクターにはネガティブな影響が予想されます。一方、サービスPMIが51.4%と上昇していることから、サービス業セクターにはポジティブな影響が期待されます。
全体的には、製造業の弱さとサービス業の強さが相殺され、株式市場全体の動きは限定的な上昇か、もしくは横ばいの可能性が高いです。
雇用統計は過剰に反応した可能性が高いので、CPIの発表まで反発すると考えています。
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