導入:50歳は老後準備のラストスパート!でも、焦らなくて大丈夫です
50歳という節目を迎え、「老後のお金、本当に大丈夫かな…」と、ふと不安になることはありませんか?周りの友人が資産運用の話を始めたり、メディアで「老後2000万円問題」という言葉を目にしたりすると、焦りを感じてしまうかもしれません 。
「もう始めるには遅いかも…」なんて、思わないでください。実は、50代は老後準備における「最後の、そして最大のチャンス」の時期なのです。多くの方にとって収入がピークを迎え、子育てが一段落し、自分のお金と向き合う時間が生まれるのがこの年代です 。
この記事では、そんな50代のあなたのために、老後のお金に関する不安を解消し、具体的な一歩を踏み出すための完全ガイドをお届けします。難しい専門用語は使いません。一つひとつ、丁寧に解説していきますので、ご安心ください。
この記事を読み終える頃には、
- あなたの現在地:周りと比べてどうなのか、客観的な立ち位置がわかります。
- 目指すべきゴール:自分にとって、いくら必要なのかが明確になります。
- ゴールまでの道のり:今日から何をすべきか、具体的な行動プランが手に入ります。
さあ、一緒に安心して豊かな老後を迎えるための準備を始めましょう。

第1章:まずは現在地を知ろう!50代のリアルな貯蓄事情
老後準備の第一歩は、自分がいまどこにいるのか、現在地を正確に知ることから始まります。ここでは、他の50代がどれくらい貯蓄しているのか、リアルなデータを見ていきましょう。ただし、大切なのは「人と比べて焦らないこと」です。あくまで客観的な目安として捉えてください。
「平均」と「中央値」のからくりに注意
貯蓄額のデータを見るとき、必ず「平均値」と「中央値」という2つの数字が出てきます。この違いを知ることが、現状を正しく理解する上で非常に重要です。
- 平均値:全員の貯蓄額を合計し、人数で割ったもの。一部の非常にお金持ちの人がいると、その金額に大きく引っ張られてしまい、多くの人の実感とはかけ離れた数字になりがちです 。
- 中央値:データを少ない順に並べたとき、ちょうど真ん中にくる人の値。こちらの方が、より「普通の人」の実感に近い数字と言えます 。
ニュースなどで目にする「50代の平均貯蓄額は1,000万円超え!」といった見出しに、「うちはそんなにない…」と落ち込む必要は全くありません。注目すべきは「中央値」です。
50代のリアルな貯蓄額データ
それでは、実際のデータを見てみましょう。金融広報中央委員会の2023年の調査によると、50代の貯蓄額は以下のようになっています 。
【提案テーブル1:50代のリアルな貯蓄額(2023年調査より)】
| 世帯構成 | 平均貯蓄額 | 中央値 | 貯蓄ゼロ世帯の割合 |
| 二人以上世帯 | 1,147万円 | 300万円 | 23.4% |
| 単身世帯 | 941万円 | 100万円 | 36.0% |
出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」(2023年)
この表から、いくつかの重要なことがわかります。
まず、二人以上世帯の平均貯蓄額は1,147万円と高額ですが、中央値は300万円です。この大きな差が、一部の富裕層が平均値を引き上げている証拠です。
次に、単身世帯に目を向けると、その差はさらに顕著になります。平均は941万円ですが、中央値はわずか100万円です 。これは、単身世帯では経済的な格差がより大きいことを示しています。
万が一の病気や失業時に頼れる人がいない単身世帯は、本来であればより多くの備えが必要なはずですが、現実は厳しい状況にある人が少なくないことを物語っています。
貯蓄ゼロでも、年収が低くても、諦めないで
さらに注目すべきは、「貯蓄ゼロ世帯の割合」です。二人以上世帯で約4分の1、単身世帯では3人に1人以上が、預貯金や株などの金融資産を全く持っていないのが現実です 。もしあなたが今、貯蓄がほとんどなくても、決して特別なことではありません。
一方で、希望の持てるデータもあります。年収が300万円未満の世帯でも、約18%が1,000万円以上の貯蓄に成功しているのです 。これは、収入の多さだけが貯蓄額を決めるわけではない、という力強い証拠です。50代になってからの貯蓄額の差は、それまでの収入の差だけでなく、「貯蓄や資産形成にどう向き合ってきたか」という
行動の差が大きく影響しています。
つまり、今からでも正しい知識を身につけ、計画的に行動すれば、未来は大きく変えられるということです。このデータを「焦りの材料」ではなく、「希望の光」として、次のステップに進んでいきましょう。

第2章:老後、いったいいくらかかるの?生活費と臨時出費をシミュレーション
自分の現在地がわかったら、次はゴール設定です。「老後」という漠然とした期間に、一体いくらお金がかかるのでしょうか。ここでも、平均的なデータを見ながら「自分ごと」としてシミュレーションしていきましょう。
毎月の生活費はいくら?「最低限」と「ゆとり」の2つのレベル
総務省の家計調査によると、65歳以上の無職世帯が1ヶ月に使うお金は、平均で以下のようになっています。
- 夫婦二人世帯:約23.6万円~26.9万円。税金や社会保険料を含めると、月々約27万円~30万円ほどかかります 。
- 単身世帯:約14.3万円~14.9万円。同様に税金などを含めると、月々約15.5万円~17万円ほどが必要です 。
これは、あくまで平均的な「最低限の日常生活費」です。もし、旅行に行ったり、趣味を充実させたり、孫にお小遣いをあげたりといった「ゆとりのある老後」を送りたいのであれば、この金額に月々約14.8万円の上乗せが必要だと考える人が多いようです 。
【提案テーブル2:老後の1ヶ月の生活費モデル(夫婦二人・無職世帯)】
| 費目 | 最低限の生活 | ゆとりのある生活 |
| 食費 | 約6.6万円 | (上乗せ) |
| 住居費 | 約1.6万円 | (上乗せ) |
| 光熱・水道 | 約2.2万円 | (上乗せ) |
| 交通・通信 | 約2.8万円 | (上乗せ) |
| 保健医療 | 約1.6万円 | (上乗せ) |
| 教養娯楽 | 約2.2万円 | 旅行や趣味など (月14.8万円) |
| その他 | 約6.6万円 | (上乗せ) |
| 非消費支出(税・社会保険料) | 約3.2万円 | 約3.2万円 |
| 合計 | 約26.8万円 | 約41.1万円 |
出典:総務省「家計調査報告」、生命保険文化センター「生活保障に関する調査」などから作成
この表を見て、「自分たちはどちらの生活を目指したいか?」を具体的にイメージすることが、目標設定の第一歩になります。
「老後2000万円問題」の本当の意味
数年前に話題になった「老後2000万円問題」。この言葉に、漠然とした不安を抱いている方も多いでしょう。しかし、この数字の正体を知れば、いたずらに怖がる必要はありません。
この2000万円という数字は、金融庁が示した、ある特定のモデルケースに基づいた試算です 。
- モデルケース:夫65歳以上、妻60歳以上の無職夫婦世帯
- 収支:年金などの収入に対し、支出が毎月約5.5万円不足(赤字)
- 計算:この赤字が30年間続くと仮定すると… 5.5万円×12ヶ月×30年=1,980万円≈2,000万円
つまり、「すべての人が2000万円が必要」なのではなく、「このモデルケースの場合、年金だけでは約2000万円足りなくなるので、貯蓄などで補う必要がありますよ」という問題提起だったのです 。
本当に大切なのは、2000万円という数字そのものではなく、「(老後の総支出)-(老後の総収入)」という計算式です。この計算をご自身の家庭に当てはめてみることが、リアルな必要額を知るための最も確実な方法です 。
忘れてはいけない「生活費以外の大きな出費」
老後のお金で計算に入れるべきなのは、毎月の生活費だけではありません。人生の後半には、以下のような臨時の大きな出費が発生する可能性があります 。
- 医療費・介護費:これが最大の変動要因です。介護が必要になった場合、平均的な介護期間は約5年。月々の費用が約8.3万円、住宅改修などの一時費用が約74万円かかるとされ、合計で500万円以上の出費になる可能性があります 。健康を維持することは、最も効果的な資産防衛策とも言えます。
- 住宅リフォーム費:持ち家の場合、10年~15年に一度は外壁や屋根の修繕が必要になります。また、将来の身体の変化に備えて、手すりの設置や段差解消などのバリアフリー化も考えられます 。
- その他:車の買い替え、子や孫への結婚・教育資金の援助、そして自分たちの葬儀費用など、まとまったお金が必要になる場面は様々です 。
持ち家か、賃貸か?住まいで変わる必要額
「老後2000万円問題」のシミュレーションは、「持ち家で、住宅ローンは完済済み」という前提に基づいています 。もしあなたが賃貸暮らしなら、話は大きく変わってきます。
賃貸の場合は、老後も家賃を払い続けなければなりません。仮に月8万円の家賃なら、25年間で8万円×12ヶ月×25年=2,400万円もの住居費がかかります。シミュレーションによっては、持ち家の人よりも1,500万円~2,000万円以上多くの資金が必要になるという結果も出ています 。
このように、老後に必要なお金は、あなたのライフスタイル、健康状態、そして住まいの状況によって大きく変わります。平均的な数字に惑わされず、ご自身の未来を具体的に想像して、オリジナルの資金計画を立てていきましょう。

第3章:あなたの収入源は?将来もらえる年金額を確認しよう
支出の見通しが立ったら、次は収入の柱である「公的年金」についてです。一体、将来いくらくらいもらえるのでしょうか。
もらえる年金はいくら?平均額を知ろう
年金には、全国民が加入する「国民年金(老齢基礎年金)」と、会社員や公務員が上乗せで加入する「厚生年金(老齢厚生年金)」があります。
- 国民年金(老齢基礎年金)のみの方(自営業者など):平均受給額は月額 約5.6万円です 。
- 厚生年金に加入していた方(会社員など):国民年金分と合わせて、全体の平均受給額は月額 約14.4万円です 。
ただし、厚生年金には大きな男女差があります。
- 男性の平均:月額 約16.4万円
- 女性の平均:月額 約10.4万円
この約6万円もの差は、女性が出産や育児でキャリアを中断したり、パートタイムで働いたりする期間が長いことなどが影響しています。この事実は、特に夫婦世帯にとって重要なポイントです。
夫の年金だけで生活を設計するのではなく、必ず夫婦合算の収入で家計を考える必要があります。また、万が一の際に備え、どちらか一方が亡くなった後の生活設計も視野に入れておくことが大切です。
年金額は現役時代の年収で変わる
厚生年金の受給額は、現役時代にどれくらいの給与をもらっていたかによって変わります。以下の表で、ご自身の年収に近いところを参考にしてみてください。
【提案テーブル3:年収別・厚生年金の受給額目安(月額)】
| 現役時代の平均年収 | 将来の厚生年金受給額(月額目安) |
| 300万円 | 約13.5万円 |
| 400万円 | 約15.5万円 |
| 500万円 | 約17.3万円 |
| 600万円 | 約19.5万円 |
| 700万円 | 約21.8万円 |
出典:日本年金機構の資料を基に作成
※40年間就業した場合の概算。老齢基礎年金を含みます。
【最重要】自分の年金額を「ねんきんネット」で正確に確認しよう!
ここまで平均額を見てきましたが、これらはあくまで目安です。老後計画で最も重要なのは、あなた自身が将来いくらもらえるのかを正確に知ることです。
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「ねんきんネット」に登録すれば、
- これまでの年金加入記録
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などを、いつでもパソコンやスマートフォンで確認できます。毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」に記載のアクセスキーがあれば、すぐに登録できます 。
まだ登録していない方は、ぜひこの機会に登録してみてください。具体的な数字を見ることで、老後計画が一気に現実味を帯び、やるべきことが明確になります。

第4章:老後資金を増やすための具体的な3つのアクションプラン
現在地とゴールが見えたら、いよいよ具体的な行動計画です。老後資金作りは、**「①貯める力」「②稼ぐ力」「③増やす力」**という3つの力をバランス良く高めることが成功のカギです。50代からでも、この3つを意識すれば、状況は大きく改善できます。
アクション1:家計を見直して「貯める力」を最大化する
まず取り組むべきは、支出を減らして、お金を貯める力を強化することです。これはリスクがなく、やれば必ず成果が出る最も確実な方法です。
効果絶大!固定費の見直しから始めよう
節約というと食費や光熱費を思い浮かべがちですが、効果が大きいのは毎月決まって出ていく「固定費」の見直しです。一度見直せば、その効果がずっと続くため、労力対効果が非常に高いのです 。以下の項目をチェックしてみましょう。
- □ 通信費:大手キャリアのスマートフォンを使っているなら、「格安SIM」に乗り換えるだけで月々数千円の節約が可能です 。
- □ 保険料:人生のステージが変わった今、本当に必要な保障内容になっていますか?子どもの独立などで、過大な死亡保障は不要になっているかもしれません。住宅ローンを組んだ際に加入した「団体信用生命保険」と保障が重複していないかも確認しましょう。ネット保険への切り替えも有効です 。
- □ 自動車関連費:車の利用頻度が低い場合、維持費(税金、保険、駐車場代、車検代)は大きな負担です。カーシェアリングや必要な時だけレンタカーを利用する選択肢も検討してみましょう 。
- □ サブスクリプションサービス:動画配信や音楽、雑誌など、契約したままほとんど使っていないサービスはありませんか?クレジットカードの明細を確認し、不要なものは解約しましょう 。
住宅ローンの繰り上げ返済は慎重に
50代になると、退職金で住宅ローンを一括返済しようと考える方も多いかもしれません。確かに、ローンの返済が終われば精神的に楽になり、総支払利息を減らせるメリットはあります 。しかし、安易な繰り上げ返済には注意が必要です。
- デメリット① 手元の現金が激減する:最大のデメリットです。繰り上げ返済にお金を使いすぎると、いざという時(親の介護、自身の病気、子どもの結婚援助など)に使えるお金がなくなってしまいます。住宅ローンより金利の高いローンを借りる羽目になっては本末転倒です 。
- デメリット② 住宅ローン控除が受けられなくなる:期間短縮型の繰り上げ返済で返済期間が10年未満になると、所得税が戻ってくる住宅ローン控除の対象から外れてしまいます 。
- デメリット③ 「団信」という保険がなくなる:団体信用生命保険(団信)は、契約者に万が一のことがあった場合、ローン残高がゼロになる生命保険の一種です。繰り上げ返済でローンを完済すると、この手厚い保障も同時になくなります。特に一家の大黒柱にとっては、これは大きな保障を失うことを意味します 。
現在の超低金利下では、繰り上げ返済で浮く利息はわずかです。その資金を無理に返済に充てるより、手元に置いておくか、後述する資産運用に回した方が有利なケースも少なくありません 。
まずは手元資金を十分に確保することを最優先に考えましょう。
アクション2:「稼ぐ力」を維持・向上させる
老後資金対策として、支出を減らすことと同じくらい、あるいはそれ以上に強力なのが「収入を維持し、長く働くこと」です。
1年長く働くことの絶大な効果
仮に年収400万円の人が1年長く働けば、それだけで400万円の収入になります。さらに、厚生年金に加入し続けることで、将来もらえる年金額も増えます。リスクの高い投資で大きなリターンを狙うよりも、はるかに確実で効果的な老後資金対策と言えるでしょう。
役職定年後を見据えたキャリアプランを
50代は、多くの企業で「役職定年」を迎える時期でもあります。給与が下がったり、モチベーションを維持するのが難しくなったりすることもあるかもしれません 。
しかし、これはキャリアの終わりではありません。これまでの経験や専門知識を活かして、後進の指導にあたったり、専門職として現場を支えたりと、新たな役割を見つけるチャンスです 。
人生100年時代、50代はまだまだ現役です。会社にぶら下がるのではなく、自律的に自分のキャリアを考える意識が重要になります 。
リスキリング(学び直し)で市場価値を高める
長く働き続けるためには、時代に合わせたスキルのアップデート、つまり「リスキリング」が不可欠です。今の仕事に関連する専門知識を深めるのも良いですし、全く新しい分野に挑戦するのも良いでしょう。
国や自治体も、社会人の学び直しを支援する制度を用意しています。
- 教育訓練給付制度:厚生労働省が指定する講座を受講・修了すると、費用の20%~最大70%が支給されます。デジタルスキルや資格取得など、幅広い講座が対象です 。
- 人材開発支援助成金:企業が従業員のリスキリングを支援する場合に、訓練経費や賃金の一部を助成する制度です。会社の制度も確認してみましょう 。
健康維持こそが最大の資産防衛
言うまでもありませんが、長く働くための大前提は「健康」です。バランスの取れた食事、適度な運動、質の良い睡眠を心がけることは、医療費や介護費を抑えることにも直結します。健康な身体こそが、最高の資産なのです 。
アクション3:お金に働いてもらう「増やす力」を身につける
「貯める力」と「稼ぐ力」を強化したら、次はそのお金に働いてもらう「増やす力」、つまり資産運用です。「50代から投資なんて…」と思うかもしれませんが、人生100年時代、運用期間はまだ十分にあります。
なぜ今、投資が必要なのか?
現在の銀行預金の金利は、ほぼゼロに近い状態です。一方で、物価は年々上昇しています(インフレ)。タンス預金や銀行預金にただお金を置いておくだけでは、買えるモノが減っていき、お金の価値は実質的に目減りしてしまうのです 。このインフレから資産を守り、少しでも増やしていくために、資産運用が必要になります。
50代からの強い味方「新NISA」と「iDeCo」
投資と聞くと難しく感じるかもしれませんが、国が個人の資産形成を応援するために用意してくれた、税金がとてもお得になる制度があります。それが「新NISA」と「iDeCo」です。この2つの制度の最大のメリットは、通常、投資で得た利益(儲け)にかかる約20%の税金がゼロになることです 。
【提案テーブル4:NISAとiDeCoの徹底比較(50代からの視点)】
| 項目 | 新NISA | iDeCo(個人型確定拠出年金) | 50代にとってのポイント |
| 引き出し | いつでも可能 | 原則60歳まで不可 | 親の介護や自身の病気など、急な出費に備えやすいNISAの柔軟性は大きなメリット。 |
| 税制優遇 | ①運用益が非課税 | ①運用益が非課税 ②掛金が全額所得控除 ③受取時も控除あり | 節税効果はiDeCoが圧倒的。年収が高い人ほどメリットが大きい。 |
| 加入年齢 | 18歳以上(上限なし) | 65歳未満まで加入可能 | どちらも50代から十分始められる。iDeCoは受給開始が60歳以降になる場合も 。 |
| 非課税枠 | 生涯1,800万円 | 拠出限度額(職業による) | NISAはまとまった資金にも対応しやすい。 |
| 手数料 | 金融機関によるが比較的安い | 加入時・運用中に手数料あり | iDeCoは口座管理手数料がかかる点に注意 。 |
出典:金融庁、iDeCo公式サイトなどの情報から作成
50代の最適戦略は?
では、どちらを優先すべきでしょうか。結論から言うと、まずはいつでも引き出せる「新NISA」から始めるのがおすすめです 。50代は、自分や家族のライフイベントで急にお金が必要になる可能性があるため、流動性の高さは大きな安心材料になります。
その上で、所得が高く節税メリットを最大限に活かしたい方や、「このお金は絶対に老後まで使わない」と決めている資金がある方は、iDeCoを併用すると良いでしょう 。
50代からの投資の基本戦略
投資で失敗しないために、以下の3つの鉄則を必ず守りましょう。
- 長期・積立・分散:一喜一憂せず、長い目でコツコツと、様々な資産に分けて投資することがリスクを抑える基本です 。
- コア・サテライト戦略:資産の大部分(7~8割)は、全世界や米国の株価指数に連動する低コストの投資信託(インデックスファンド)で「コア(核)」として守りながら安定成長を目指します。残りの少額(2~3割)で、個別株など少しリスクを取る「サテライト(衛星)」投資に挑戦するという考え方です 。
- まとまったお金は一度に入れない:退職金などのまとまった資金は、一括で投資すると高値で買ってしまうリスクがあります。数ヶ月から1年以上かけて、毎月決まった額を投資していく「時間分散」を心がけましょう 。

第5章:50代だからこそ気をつけたい!資産運用の落とし穴と詐欺の手口
50代は資産形成のチャンスであると同時に、知識不足や焦りから大きな失敗をしやすい時期でもあります。大切な老後資金を守るために、よくある失敗例と、近年急増している悪質な詐欺の手口を知っておきましょう。
50代が陥りがちな投資の失敗例
- 失敗例① 退職金を一括投資してしまう 長年勤め上げた証である退職金。まとまった大金を手にしたことで金銭感覚が麻痺し、「これを元手に一気に増やそう」と、よく考えずに全額を一つの金融商品に投資してしまうケースです。もしその直後に市場が暴落すれば、取り返しのつかない大きな損失を被る可能性があります 。
- 失敗例② 金融機関の窓口で言われるがままに契約 退職金が入った途端、銀行や証券会社から「退職金特別プラン」などの勧誘を受けることがあります。しかし、勧められるがままに契約するのは危険です。販売員は、あなたのためではなく、自社の利益のために手数料の高い商品を勧めている可能性があります 。特に、仕組みが複雑で手数料も高い「ファンドラップ」や「仕組み債」、「毎月分配型の投資信託」などは、初心者が手を出すべきではありません 。
- 失敗例③ 「時間がない」と焦ってハイリスク投資に手を出す 「もう50代だから、一発逆転を狙わないと間に合わない」という焦りから、FXや暗号資産(仮想通貨)、新興国の通貨建て債券など、値動きの激しいハイリスク・ハイリターン商品に手を出してしまう失敗です。50代は、もし大きな損失を出しても、労働収入で取り返す時間が限られています。一攫千金ではなく、着実に資産を守り育てる視点が何より重要です 。
- 失敗例④ 短期的な値動きに一喜一憂してしまう 投資を始めると、日々の価格の上下が気になってしまうものです。しかし、少し下がっただけで怖くなって売ってしまったり(狼狽売り)、急に上がった銘柄に飛びついてしまったり(高値掴み)といった感情的な取引は、失敗のもとです 。
【緊急警告】あなたも狙われている!急増するSNS型投資詐欺
今、特に50代・60代をターゲットにした、SNSを利用した投資詐欺が深刻な問題になっています。被害額が数千万円、中には1億円を超えるケースも発生しており、絶対に他人事だと思わないでください 。
典型的な手口
- きっかけはSNS広告:FacebookやInstagram、YouTubeなどで、有名な実業家や投資家の写真や名前を無断で使った広告が表示されます。「〇〇式 必勝投資術」「生徒の9割が儲かっている」といった魅力的な言葉で誘います 。
- LINEグループへ誘導:広告をクリックすると、LINEの友達追加やグループチャットへの参加を促されます。
- 劇場型の巧妙な演出:グループ内では、「先生」と呼ばれる指導役と、多くの「サクラ(偽の参加者)」が、「先生のおかげでこんなに儲かりました!」といった成功体験を次々と投稿し、信用させます 。
- 偽の投資アプリへ入金:アシスタントを名乗る人物から個別に連絡があり、偽の投資サイトやアプリに登録させ、指定された個人名義の銀行口座に振り込ませます。
- 罠にはめる:最初のうちは、アプリ上で利益が出ているように見せかけ、少額なら出金にも応じることで、完全に信用させます。そして、「もっと大きな金額を入金すれば、もっと儲かる」と、追加の入金を何度も要求します。
- 突然の音信不通:多額の資金を入金させ、いざ全額出金しようとすると、「税金がかかる」「手数料が必要」などと理由をつけてさらに支払いを要求。最終的には連絡が取れなくなり、すべてのお金を失います 。
詐欺に遭わないための鉄則
- 「必ず儲かる」「元本保証」「あなただけ」は100%詐欺:投資の世界に、ノーリスクで大きなリターンが得られる「うまい話」は絶対に存在しません 。
- SNSで知り合っただけの相手からの投資話は無視する:相手がどんなに有名な人物を名乗っていても、本人である保証はどこにもありません。
- 個人名義の口座への振り込みは絶対しない:正規の金融機関が、振込先に個人名義の口座を指定することはありえません。
- 金融庁の登録業者か確認する:金融商品を扱う業者は、必ず金融庁に登録されています。少しでも怪しいと思ったら、金融庁のウェブサイトで確認しましょう。
50代の投資哲学は「大きく増やす」ではなく、「守りながら、インフレに負けない程度に少し増やす」です。この心構えが、大きな失敗や詐欺被害からあなたの大切な資産を守ります。

結論:50代からの計画的な準備で、安心して豊かな老後を迎えよう
50歳からの老後のお金の準備について、様々な角度から見てきました。情報量が多く、少し大変に感じたかもしれません。しかし、大切なのは、すべてを一度にやろうとしないことです。まずは、できることから一つずつ始めてみましょう。
最後に、この記事の重要なポイントをまとめます。
- 現在地を知る:まずは「平均値」ではなく「中央値」を参考に、ご自身の貯蓄状況を冷静に把握しましょう。ゼロからのスタートでも、決して珍しいことではありません。
- 自分だけのゴールを設定する:「老後2000万円」という言葉に惑わされず、「老後の支出 - 老後の収入」で、あなた自身に必要な金額を計算してみましょう。
- 3つの力をバランス良く高める:「貯める力(家計見直し)」「稼ぐ力(長く働く)」「増やす力(資産運用)」の3つを、できる範囲で同時に進めていくことが成功のカギです。
- 最強の老後対策を意識する:最も確実で効果的な対策は「長く健康に働くこと」です。日々の健康管理が、将来の経済的な安定に直結します。
- 焦らず、王道を歩む:資産運用は、税制優遇の大きい「新NISA」を活用し、「長期・積立・分散」の鉄則を守って、焦らずコツコツと始めましょう。
- 甘い話には絶対に乗らない:「必ず儲かる」という話は、100%詐訪です。大切な資産は、あなた自身で守りましょう。
50代からの10年、15年は、決して短い期間ではありません。今日から計画的に行動を始めれば、あなたの未来は確実に、そして大きく変わります。
さあ、まずは最初の一歩として、ご自宅に届いている「ねんきん定期便」を探し出し、「ねんきんネット」に登録してみませんか?そこから、あなたの新しい未来が始まります。

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