夢と金 富裕層を魅了する『意味を売る』戦略

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現代のビジネスは、単に商品やサービスの「機能」を提供するだけでは成功しません。消費者が本当に求めているのは、その背後にあるストーリーや人とのつながり、つまり「意味」です。本記事では、富裕層をターゲットにしたビジネス戦略として、「機能より意味を売る」ことの重要性について探ります。

また、実際の成功例を通じて、どのようにしてファンを創造し、持続的なビジネスを築くことができるのかを解説します。あなたも「売上増」より「ファン創造」を選び、消費者の心をつかむビジネスを目指してみませんか?

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目次

著者紹介

西野亮廣とは?

1980年生まれの西野亮廣(にしの あきひろ)は、芸人としてのキャリアをスタートし、その後絵本作家としても大成功を収めました。モノクロのペン1本で描かれた絵本作品には、『Dr.インクの星空キネマ』や『ジップ&キャンディ ロボットたちのクリスマス』、『オルゴールワールド』などがあります。一方で、完全分業制によるオールカラーの絵本としては、『えんとつ町のプペル』、『ほんやのポンチョ』、『チックタック~約束の時計台~』が挙げられます。

多才な著者・西野亮廣の活躍

西野亮廣は、絵本だけでなく、小説やビジネス書でもその才能を発揮しています。小説『グット・コマーシャル』、ビジネス書『魔法のコンパス』、『革命のファンファーレ』、『新世界』、そして共著『バカとつき合うな』など、多岐にわたるジャンルでベストセラーを生み出しています。

映画『えんとつ町のプペル』の快挙

西野が制作総指揮を務めた『映画えんとつ町のプペル』は、デビュー作にして異例の大ヒットを記録しました。動員196万人、興行収入27億円を突破し、第44回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞を受賞するという快挙を達成。さらに、「アヌシー国際アニメーション映画祭2021」の長編映画コンペティション部門にノミネートされ、第50回ロッテルダム国際映画祭ではクロージング作品として上映、第24回上海国際映画祭インターナショナル・パノラマ部門へも正式招待されるなど、海外からも高い評価を受けています。

『えんとつ町のプペル』の広がる世界

『えんとつ町のプペル』は映画だけでなく、ミュージカルや歌舞伎としても展開されています。特にミュージカルでは、ニューヨーク公演に向けた準備が進行中です。西野亮廣の創造力は、国内外でますます注目を集めており、その活動の幅広さには驚かされます。

本書の要点

  • 機能ではなく意味を売る:現代の消費者は商品やサービスの「機能」だけでなく、その背後にあるストーリーや人とのつながり、「意味」を求めるようになっている。
  • プレミアムとラグジュアリーの違い:プレミアムは「競合の中でも最上位の体験」を提供し、ラグジュアリーは「競合が存在しない体験」を意味する。ラグジュアリー商品の価格は、機能ではなくブランドの「意味」に基づいて決まる。
  • 富裕層にとっての価値:富裕層は商品やサービスに対して、機能だけでなくブランドとしての価値やステータスを重視する。これがプレミアム商品とラグジュアリー商品を区別するポイントである。
  • ファン創造の重要性:『NORA HAIR SALON』の例のように、売上増よりも「ファン創造」を優先することで、持続的な支援や売上を確保できる。ファンは偶然に生まれるのではなく、狙いを定めた戦略の結果である。
  • お金とビジネスの本質を学ぶことの重要性:本書は子どもにもわかりやすい形でお金の本質やビジネスモデルを解説しており、大人にとっても有益である。最新技術やトレンドについても紹介されており、幅広い読者におすすめできる。

知識不足がもたらす悲劇の連鎖

沈没事故の本当の原因は「お金」

2022年4月23日、観光船「KAZU Ⅰ」が知床半島沖で沈没し、乗客・乗員のうち20名が命を落とし、残りは行方不明となりました。この事故はメディアで大きく取り上げられ、運行会社の社長は厳しく批判されました。しかし、問題は個人の責任にとどまらず、事故の根本原因を探る必要があります。

整備不良や無理な運行が事故の直接的な原因とされていますが、これらは表面的なものでしかありません。なぜ整備不良のまま海に出たのか? なぜ無理な運行を続けたのか? その答えは「お金がなかったから」に行き着きます。

知識不足が命を奪う

2005年に世界自然遺産に登録された知床は、美しい自然で年間100万人以上の観光客を魅了してきました。しかし、コロナ禍により観光業は大打撃を受け、観光船の運行会社はクラウドファンディングで資金を募りました。1ヶ月半で集めた支援金は622万円でしたが、運営費用を差し引くと1社あたり70万円程度しか残りませんでした。

十分な資金があれば、無理な運行を避けることができ、命が救えたかもしれません。運行会社に足りなかったのは「クラウドファンディングの知識」でした。知識不足は、時に命に関わることもあるのです。

富裕層が支える「安さ」の真実

日本では、高価な商品に対して「高すぎる」と非購入者からクレームが入ることがあります。しかし、これがどれほど不合理で冷酷な行為かを理解するために、日本航空の航空運賃を例にとってみましょう。

東京からニューヨークへの飛行機のチケットは、エコノミーからファーストクラスまで価格が異なります。全座席が売れれば約1億円の売り上げになります。もし高価格帯の席をすべて取り除き、エコノミークラスのみにした場合、売り上げは1億円を大きく下回り、その差額はエコノミー席の乗客が負担することになります。

富裕層が購入する高価格帯の商品があることで、経済的に余裕のない人々が安価なサービスを享受できるのです。弱い人に優しい世界を望むなら、価格についての正しい知識を身につけることが必要です。

富裕層にとっての「価値」とは?プレミアムとラグジュアリーの真実

富裕層をターゲットにした商品戦略

あなたが製品やサービスを広く提供したいと考えるなら、高価格帯の商品を購入してくれる富裕層を取り込むことが不可欠です。では、富裕層は何に価値を見出しているのでしょうか?彼ら向けの商品をどのように作ればいいのでしょうか?

高価格帯の商品を作る際には、「プレミアム」と「ラグジュアリー」の違いを理解することが重要です。プレミアムとは「競合の中でも最上位の体験」を指し、ラグジュアリーは「競合が存在しない体験」を意味します。

自動車業界に見るプレミアムとラグジュアリー

山口周氏の著書で紹介されている自動車業界の例を見てみましょう。自動車業界を「役に立つ/立たない」と「意味がある/ない」の2軸で分けると、各車種の位置づけが明確になります。

日本車は「役に立つが意味がない」カテゴリーに属しますが、BMWやベンツは「役に立ち、意味がある」カテゴリーに入ります。これらの車は性能だけでなく、ブランドとしての価値も持っているのです。

一方、フェラーリやランボルギーニは「意味があるが役に立たない」車です。縦開きのドアや時速350kmの速度は日常生活には不要ですが、所有者にとってはステータスの象徴です。スーパーカーは機能的には使われないことが多く、その存在自体が「意味」を持っているのです。

ラグジュアリーの「言い値」

プレミアム商品は多くの人がより良いものを求めるため、その価値に対して高価格が設定されます。しかし、ラグジュアリー商品は競合が存在しないため、価格は販売者の「言い値」となります。

例えば、カウンタックを選ぶ顧客は他の車と比較せず、最初からカウンタックを購入するつもりです。ラグジュアリー商品の価格は機能ではなく、ブランドの「意味」に基づいて決まります。

ラグジュアリーは「夢」

プレミアムとラグジュアリーの違いを明確にするために、「プレミアム=高級」「ラグジュアリー=夢」と定義してみましょう。ラグジュアリーの本質は「夢」です。「夢」とは、認知度が高いが普及度が低いものを指します。つまり、「皆が知っているけれど誰も持っていない」ものがラグジュアリーです。

ルイ・ヴィトンの戦略

ルイ・ヴィトンの店舗戦略を例に見てみましょう。ヴィトンは高級デパートの1階や繁華街の一等地に出店しています。多くの人が気軽に入れない場所に店を構えることで、ブランドの「認知度」を上げ、「普及度」を下げるのです。手の届かない夢としてのブランド価値を高めるために、広告費を投じているのです。

ルイ・ヴィトンの店舗に気軽に立ち寄れる人が少ないほど、そのブランドの価値は増します。手に入れにくいからこそ、所有することが夢となるのです。ラグジュアリーブランドは、まさに「手の届かない夢」を提供しているのです。

機能を売るな、意味を売れ!富裕層に高くものを売る秘訣

ブランドになれない人のアプローチ

人口減少により、私たちは「たくさん売ることができない時代」に生きています。商売をする人として、富裕層ではない一般人に、従来よりも高い価格で商品を買ってもらうためにはどうすればいいのでしょうか?

一つの選択肢は「意味をつける(ブランドにする)」というアプローチですが、新参者がプロと戦ってブランドを創出することは容易ではありません。では、ブランドになれない人ができるアプローチとはどのようなものでしょうか?

インターネットやSNSが普及した現代では、情報は誰もが利用できる公共財です。以前は「まずいラーメン店」が点在していた時代もありましたが、今ではどの店も大体美味しいと言われています。

かつては「まずいお店」が存在したからこそ、「美味しいお店」になることで顧客を引きつけることができました。しかし、現在のサービス提供者は「更に美味しいお店」になることで顧客を引きつけようとしています。

「美味しさ」の追求から「人」で選ばれる時代へ

「美味しさ」をこれ以上追求しても、一般の消費者にはわからない程度の差にしかなりません。「大体美味しい」もの同士での競争では、技術差も価格差も生まれません。「更に美味しいラーメン」を作っても、それを高く売ることはできないのです。

機能(ラーメン店であれば「美味しさ」)で差別化ができなくなった現代のお客さんは、何を基準に商品を選ぶのでしょうか?答えは「人」です。消費者は「誰から買うか」を基準に選択するようになったのです。

ラーメン店Aやラーメン店Bではなく、「いつもお世話になっている山田さんのラーメン屋さん」が選ばれるのです。美味しさや価格が競合他社と同等であれば、消費者は自然とつながりのある人を支援したいと考えます。

つまり、今や消費行動はただの購入から、「支援行動」へと移行しているのです。山田さんのラーメンは山田さんの「応援グッズ」となり、消費者は山田さんの「ファン」となるのです。

機能ではなく「意味」を売る

ビジネスを成功させるために重要なのは、ラーメン店Aやラーメン店Bになることではなく、「山田さんの店」になることです。「機能」を売るだけでは、競争が激化し利益が薄くなる一方です。

機能ではなく「意味」を売りましょう。「応援代」が商品に含まれる状態に持っていくことが重要です。ファン心理を学び、応援が生まれる仕組みを理解することが、これからのビジネス成功の鍵となります。

売上増より「ファン創造」を選ぶ!NORA HAIR SALONの実例

「ファン創造」の実例

著者は各地でオンラインサロンメンバーと飲む機会を設けていますが、東京開催の際には参加者が多すぎてお店に入りきれないことがありました。そんな時、東京・表参道にある美容室『NORA HAIR SALON』が店を早めに閉めて、オフ会の会場として提供してくれました。

初めて『NORA HAIR SALON』を訪れたサロンメンバーと残っていた美容師さんたちは、「今度、僕の髪を切ってください」「是非、切らせてください」と、カット技術や料金を確認することなく契約を交わしていました。

現代では、カットが下手な美容師や高すぎる料金を設定する美容室はほとんど存在しません。どの美容室も素人目には大差がないため、消費者はスタッフとの関係性を重視するようになりました。お酒を酌み交わして仲良くなったスタッフのためにお金を使う方が気分が良いのです。

ファン創造の成功例

『NORA HAIR SALON』は、この日の夜の売上を捨てて「ファン創造」を選びました。このような活動はコロナ禍でも実を結びました。緊急事態宣言中に『NORA HAIR SALON』が「未来チケット」と称してヘアカット回数券をオンラインで販売したところ、瞬く間に売れました。著者も購入しましたが、実際には回数券が欲しかったわけではなく、美容師たちを支援するためにお金を渡したかったのです。「未来チケット」は実質的に「応援グッズ」だったのです。

ファンは偶然に生まれない

『NORA HAIR SALON』のファンは偶然に生まれたわけではありません。彼らは狙いを定めて「ファン創造」にコストを支払い、その結果としてファンが生まれました。このような取り組みが、いかにしてビジネスの成功を支えているかを示しています。

ファンを作ることが、今やビジネス成功の鍵となっています。単に商品やサービスを提供するだけでなく、消費者との関係性を深めることで、信頼と応援を得ることができるのです。これが現代のビジネスにおける「意味を売る」成功例と言えるでしょう。

まとめ:ビジネスの本質とファン創造の重要性

私たちは「たくさん売ることができない時代」に生きています。そのため、富裕層ではない一般人に、従来よりも高い価格で商品を買ってもらうための戦略が求められます。この記事では、ブランドになれない人が取るべきアプローチとして、「機能を売るのではなく、意味を売る」ことの重要性を強調しました。

  • 機能を売るな、意味を売れ!
    • 人口減少により、従来のビジネスモデルでは持続的な成長が難しくなっています。インターネットやSNSが普及した現代では、情報は誰もが利用できる公共財となり、どの店も大体同じレベルのサービスを提供しています。この中で差別化するためには、機能ではなく「意味」を売る必要があります。つまり、商品やサービスの背後にあるストーリーや人とのつながりが重要になるのです。
  • プレミアムとラグジュアリーの違い
    • 高価格帯の商品を作るには、「プレミアム」と「ラグジュアリー」の違いを理解することが必要です。プレミアムは「競合の中でも最上位の体験」を提供し、ラグジュアリーは「競合が存在しない体験」を意味します。ラグジュアリー商品の価格は機能ではなく、ブランドの「意味」に基づいて決まります。
  • 富裕層にとっての「価値」
    • 富裕層は「機能」だけでなく「意味」を求めています。例えば、自動車業界では、BMWやベンツは性能だけでなく、ブランドとしての価値も提供しています。一方、フェラーリやランボルギーニは日常の利便性よりもステータスの象徴としての意味を重視しています。
  • ファン創造の成功例
    • 『NORA HAIR SALON』は、売上増よりも「ファン創造」を選び、緊急事態宣言中に「未来チケット」と称してヘアカット回数券をオンラインで販売しました。これは、美容師たちを支援するために設けられたもので、多くのファンが購入しました。『NORA HAIR SALON』のファンは偶然に生まれたわけではなく、狙いを定めた「ファン創造」のコストを支払った結果です。

お金とビジネスの本質を学ぶ

本書は、子どもにもわかる平易さで、お金の本質やビジネスモデルについて解説しています。著者ならではの歯切れの良い語り口に、おもしろがりながらどんどん読み進められる内容です。子どもに勧めたり、親子で読んだりしても楽しめるでしょう。内容は大人が読んでももちろんためになります。お金や社会について理解を深めたい人、事業のあり方について考えたい人に広くおすすめしたい一冊です。

また、本書では、「お金」に関する最新技術やトレンドについても紹介されています。著者はプペル作品の一部をNFTで販売し、大きな収益を得ており、NFTやブロックチェーンなどのとっつきづらい話題をわかりやすく解説しています。もっとお金に詳しくなりたい人には、ぜひ通読をおすすめします。

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この記事を書いた人

真毅のアバター 真毅 自由人

趣味はカメラ、ランニング、読書。職業はシステムエンジニア。昔はリサーチハウスで企業調査、産業分析を行っていました。目標は投資で稼いでゆっくり生きる。資格はFP2級、証券アナリスト。投資対象は日本株、米国ETF、金、暗号資産、不動産。金融資産と実物資産の両輪で資産形成。

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