ども♪アラフィフの「人柱」ブロガーです。
2026年8月下旬、船橋の夜は昼間の熱を孕んだまま更けていきます。時刻は日付が変わった午前0時過ぎ、寝苦しい熱帯夜になりました。窓の外の住宅街は静まり返り、遠くを走る貨物列車の低い響きだけが、時おり夜気を伝ってきます。手元のグラスに注いだばかりの炭酸水は、泡がひとつ、またひとつと静かに抜けていました。
眠りにつく前のわずかな時間、私は米国市場のリアルタイム画面と、NVYYという銘柄の名前を、じっと見つめていたのです。利回り134%超という桁外れの看板を掲げながら、実はNVIDIA株を一株も保有していない――そんなねじれを抱えたETFの正体を、今夜は解剖します。
申し遅れました。私は証券アナリスト(CMA)とFP資格を持つ、アラフィフの兼業ブロガーです。超高配当カバードコールETFを16銘柄、1年間まるごと自腹で人体実験しています。
今夜の主役は、その実験群の中でも「利回りの桁」が突出したNVYY(GraniteShares YieldBOOST NVDA ETF)です。名前にこそ、生成AIブームの主役であるエヌビディアの「NVDA」を掲げています。しかし、その正体は、名前から受ける印象とは大きく異なるのです。
私がなぜ、寝苦しい深夜にわざわざNVYYの記事を書くのか。理由は、この銘柄が「NVDA」という華やかな名前をまといながら、実態はまるで別物だからです。
NVYYは、NVIDIA株そのものを一株も保有していません。グラスの底で静かに抜けていく炭酸の泡のように、看板の派手さと中身の実力は、刻一刻とすれ違っていくのです。CMAとして仕組みを裁き、FPとして家計への意味へ翻訳する。命懸けの講義でお届けします。
NVIDIAを名乗る利回り134%超ETF――NVYYという装置の正体

まず、NVYYが何をする機械なのかを解剖します。正式名称は「GraniteShares YieldBOOST NVDA ETF」です。運用会社グラニットシェアーズ(GraniteShares=米国のETF運用会社)が2025年5月13日に設定した、まだ生まれて1年ほどのファンドになります。
名前に含まれる「NVDA」は、言わずと知れた半導体の巨人エヌビディアのティッカーです。生成AIブームの主役を、そのまま看板に据えた格好になります。
NVYYの基本スペックを、まず一枚の表で俯瞰しましょう。派手な数字と不穏な数字が、同居しているのが見えてきます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | GraniteShares YieldBOOST NVDA ETF |
| ティッカー | NVYY |
| 設定日 | 2025年5月13日 |
| 経費率 | 年1.15% |
| 現在株価 | 12.65ドル(2026年7月22日終値) |
| 52週高値/安値 | 28.30ドル/12.22ドル |
| 純資産総額 | 約3,627万ドル |
| 発行済み株式数 | 293万株 |
| TTM分配金利回り | 134.57% |
| 過去12ヶ月分配金合計 | 17.02ドル |
| 分配頻度 | 週次 |
表の中で、まず目を疑うのが利回りです。TTM分配金利回り(Trailing Twelve Months=過去12ヶ月の分配金合計をもとにした利回り)は、なんと134.57%になります。過去12ヶ月に支払われた分配金の合計17.02ドルを、現在株価12.65ドルで割った数字です。
株価の1.3倍を超える金額を、1年で分配金として配った計算になります。しかも分配の頻度は、月次でも四半期でもなく、毎週です。株価そのものを1年で配り切ってなお余りある派手さこそが、NVYYの最大の売り文句になります。
ただし、表にはもう一つの顔があります。52週高値は28.30ドル、対して52週安値は12.22ドルです。現在株価12.65ドルは、その安値のすぐ隣に貼りついています。
この1年で、株価は高値からおよそ半値以下まで沈んだわけです。派手な分配金を配りながら、器そのものの価値は溶けていった。この二面性を、まず頭の片隅に置いてください。
NVYYは「YieldBOOST」というシリーズの一員です。YieldBOOST(イールドブースト=利回りを増幅させる、というグラニットシェアーズ独自の戦略ブランド)とは、オプションを売って高い分配金を生み出す仕組みを指します。
オプションを売ると、その対価としてプレミアム(オプション売却で受け取る現金)が手に入ります。NVYYはこのプレミアムを、週次の分配金として投資家に配る設計です。「利回りを増幅する装置」を名乗るだけあって、看板の数字は確かに桁外れなのです。
ここで、当ブログの過去記事を読んでくださった方に、一つ注意を促します。以前この実験ノートで解剖したNVDYを覚えているでしょうか。NVDYは、シンセティック・コールスプレッド戦略(合成のオプション取引を組み合わせる手法)でNVDA連動のエクスポージャー(値動きへの連動)を保有しつつ、上値をヘッジする設計でした。
形はどうあれ、NVDYはNVIDIAの値動きに連動する仕組みを内側に持っていたのです。ところがNVYYは、名前はNVDYとよく似ていても、中身は全くの別物になります。その決定的な違いを、次章で暴きます。
「NVDAのプット売り」という誤解――実態はNVDL(2倍レバレッジ)へのプット売り

ここが、本記事で最も伝えたい核心になります。SNSや検索結果でNVYYの名前を見つけた読者の多くは、こう考えます。「NVDAに対してオプションを売り、プレミアムを稼ぐ商品なのだろう」と。指数や個別株に関連づけて理解を助ける説明であり、正論です。が、その一文だけを鵜呑みにすると、事実を取り違えてしまいます。
正確な事実を、グラニットシェアーズの公式説明から確認します。NVYYがオプションを売る相手は、NVDA本体ではありません。
NVYYが実際に対象とするのは、NVDL(NVDAの日次値動きを2倍にして追う2倍レバレッジETF)なのです。NVDA本体ではなく、その2倍増幅版に対してプットを売っている。ここが、名前と実態の決定的な乖離になります。
そして、この構造には、もう一つ見逃せない事実が潜んでいます。NVYYがプットを売る相手であるNVDLもまた、グラニットシェアーズ自身が運用する2倍レバレッジ姉妹ファンドなのです。
つまり、同じ運用会社が「対象となる2倍レバレッジETF(NVDL)」と「そのレバレッジETFへのプット売りETF(NVYY)」の両方を、自社の商品棚に並べていることになります。原資産も、その原資産にオプションを売るファンドも、同じ屋根の下で作られている構図です。
用語を一つ、丁寧に補足します。プットオプション(Put Option=あらかじめ決めた価格で売る権利)を売るとは、「値下がりしたら決めた価格で買い取ります」と約束して、その対価にプレミアムを受け取る取引です。
NVYYはこの約束の相手を、値動きの穏やかなNVDA本体ではなく、値動きが2倍に荒れるNVDLに向けています。穏やかな原資産ではなく、増幅された荒れ馬の側にプットを売っているのです。
NVYYの収益構造を、二重構造として整理しておきましょう。名前の印象と、実際の中身がどれだけ離れているかが見えてきます。
- 名前の印象:NVDAに連動する、あるいはNVDAにオプションを売る商品
- 実際の対象資産:NVDA本体ではなく、NVDAの日次2倍値動きを狙うNVDL
- 収益手段:そのNVDLに対してプットオプションを売り、プレミアムを得る
- 分配原資:受け取ったプレミアムを、週次で分配金として配る
さらに、売るプットの中身にも触れておきます。グラニットシェアーズの説明によれば、NVYYが売るプットの権利行使価格は、40%OTM(アウト・オブ・ザ・マネー=現値から離れた、行使されにくい価格)から10%ITM(イン・ザ・マネー=すでに行使されやすい価格)までのレンジで設定されます。
満期は1週間から1ヶ月です。つまりNVYYは、短い満期のプットを次々と売り替えながら、NVDLのボラティリティ(値動きの荒さ)を現金に換えているのです。
なお、原資産のNVDLは、2026年6月26日付で3対1のフォワード株式分割(1株を3株に分ける株式分割)を実施しています。NVYY自体が分割されたわけではなく、あくまで原資産の側で分割があった時期という程度の話です。ここでは深追いせず、事実として書き留めるにとどめます。
なぜ、この乖離がそれほど危険なのでしょうか。理由は、リスクの質がまるで変わるからです。仮にNVDAに直接連動するETFなら、値動きは個別株とほぼ同じで、素直に理解できます。
ところがNVYYは、2倍レバレッジのNVDLへのプット売りという、増幅と非対称性を二重に抱えた構造を持ちます。相場が穏やかなうちは高い分配金の顔を見せますが、急落局面では牙をむきます。その檻の仕組みは、第4章でたっぷり解剖します。
名前の「NVDA」を信じて、素直なNVIDIA連動商品だと思い込む。その思い込みこそが、NVYYで最初に踏む落とし穴になります。「NVDAへのプット売り」と「2倍レバレッジNVDLへのプット売り」は、似て非なるものなのです。
看板の三文字を剥がせば、そこには2倍に荒れる原資産が潜んでいます。次章では、その原資産が生み出す分配金が、設定初期からどう変質してきたかを追います。
分配金の軌跡――96.81%から31.56%へ、設定1年後も続く高ROC体質

名前と実態の話が続いたので、分配金の実額に踏み込みます。ここに、NVYYのもう一つの顔があります。まず注目すべきは、SECに提出された19(a)通知書(米国証券取引委員会への分配金の源泉開示通知)で、中身が直接検証できた2件の分配金です。
分配金という名前が付いていても、その中身が利益とは限らない――その現実を、公式書類が語っています。
一つ目は、2026年6月9日に支払われた分配金(基準日2026年6月5日)です。1株あたり0.12955ドルのこの分配金は、GAAP基準(米国会計基準)で96.81%がROC(Return of Capital=元本払戻金)だったと開示されています。
ROCとは、運用で稼いだ利益ではなく、投資家が預けた元本を返している部分を指します。つまり、この週に受け取った分配金の大半は、自分のお金が形を変えて戻ってきただけだったのです。
二つ目は、2026年7月7日に支払われた分配金(基準日2026年7月2日)です。1株あたり0.12029ドルのこの分配金は、GAAP基準で31.56%がROCと開示されています。1ヶ月ほどでROC比率は96.81%から31.56%へと下がりました。
ROCの比率そのものは週ごとに揺れ動くのです。ただし、ここで見逃してはならない点があります。96.81%という極端なROCが記録されたのは、設定から1年以上が過ぎた2026年6月だという事実です。
ここが、以前解剖したTQQYとの決定的な違いになります。TQQYの場合、極端なROCは設定初期の特別分配という一過性の現象でした。
ところがNVYYは、2025年5月の設定から1年以上を経てなお、96.81%という高ROCの分配を出しているのです。設定初期だけの過渡的な現象ではなく、1年を超えても続く「高ROC体質」。ここに、NVYYの分配金の危うさが凝縮されています。
では、その週次分配金の実額は、どう推移してきたのでしょうか。筆者のポートフォリオ管理DBで、欠落なく連続して確認できている推移を並べます。
| 基準日 | 分配金 |
|---|---|
| 2025年6月6日 | 0.5080ドル |
| 2025年7月25日 | 0.5080ドル |
| 2025年9月19日 | 0.4300ドル |
| 2025年11月21日 | 0.4070ドル |
| 2026年1月2日 | 0.3500ドル |
| 2026年3月6日 | 0.2916ドル |
| 2026年4月2日 | 0.2109ドル |
| 2026年5月22日 | 0.2105ドル |
| 2026年5月29日 | 0.1277ドル |
| 2026年6月5日 | 0.1296ドル(19(a)通知書でこの週の支払額0.12955ドルの96.81%がROCと確認) |
| 2026年6月26日 | 0.1195ドル |
| 2026年7月2日 | 0.1203ドル(19(a)通知書でこの週の支払額0.12029ドルの31.56%がROCと確認) |
| 2026年7月17日 | 0.1100ドル |
ここで一言、データの扱いに触れておきます。この推移は、2025年6月から2026年7月まで、期間の欠落なく連続して確認できています。以前のTQQYの記事では、一部の期間を一次情報収集の対象に含めていませんでした。
しかしNVYYについては、そうした期間の飛びがありません。だからこそ、なめらかな右肩下がりの一本道として、正面から語ることができます。
その一本道の落差を、数字で確認しましょう。2025年6月6日に0.5080ドルあった週次分配金は、2026年7月17日には0.1100ドルまで細りました。
この約1年1ヶ月での減少率は、約78.35%になります(計算式:(0.5080−0.1100)÷0.5080×100=78.35%)。1回あたりの分配金が、8割近くも溶けた計算です。株価そのものを1年で配り切る勢いだった看板の裏で、原資は確かに痩せ細っているのです。
なお、推移の途中には一つ、目を引く段差があります。2026年5月22日の0.2105ドルから、翌週5月29日の0.1277ドルへ、1週間で約39.3%という大きな下げ幅が生じています。
ただし、この一週での急減の原因について、私は一次情報を確認できていません。したがって、もっともらしい理由を推測で当てはめることはしません。「大きな段差があった」という事実だけを、淡々と書き留めておきます。
CMAとして、こうした減少の背景を一般論として読み解きます。NVYYの分配原資はオプションプレミアムです。プレミアムの大きさは、原資産であるNVDLのボラティリティに強く左右されます。相場が荒れるほどオプションは高く売れ、相場が凪ぐほど安くなります。分配金は、相場の恐怖を換金した対価なのです。
実は私自身も、このNVYYを6株保有しています。この右肩下がりの分配金が、私自身の含み損にどう跳ね返っているのか。その実測値は、第5章で包み隠さずお伝えします。
上は天井、下は底が抜ける――プット売り×2倍レバレッジという非対称の檻

NVYYの利回りが桁外れでも、私が警戒を解かない理由。それは、この銘柄が抱える構造的な非対称性にあります。プットオプションを売る戦略には、宿命的な歪みがあります。得られる利益はプレミアムの範囲で頭打ち、被る損失は相場の急落とともに膨らむという歪みです。上と下で、リスクの姿がまったく釣り合っていないのです。
仕組みを、単純な数値で確認しましょう(※仮定計算例。あくまで理解のための仮定計算であり、NVYYの実際の権利行使価格ではありません)。ある資産が100ドルのとき、権利行使価格95ドルのプットを売り、プレミアム5ドルを受け取ったとします。
満期までに価格が95ドルを上回って推移すれば、プットは行使されず、5ドルは丸ごと収益になります。上昇相場でどれだけ資産が値上がりしても、プットの売り手の取り分は、受け取ったプレミアム5ドルまでです。上値の果実は、ここできっぱり断ち切られます。
問題は下落局面です。同じ前提で考えます(※仮定計算例。NVYYの実際の権利行使価格ではありません)。資産が70ドルまで急落したとします。プットの売り手は、95ドルで買い取る義務を負います。
95ドルとの差額25ドルの損失から、受け取ったプレミアム5ドルを引いても、差し引き20ドルの損失が残ります。受け取りは5ドルで頭打ち、損失は20ドルへ膨らむのです。上は天井、下は底が抜ける。プット売りの非対称性が、ここにむき出しになります。
さらに恐ろしいのが、NVYYの原資産が「2倍レバレッジのNVDL」である点です。第2章で見たとおり、NVYYがプットを売る相手は、NVDAの日次2倍値動きを狙うNVDLでした。
仮にNVDAが1割下落すれば、日次2倍レバレッジのNVDLは、理論上およそ2割下落します(※「日次2倍」「理論上」という条件付きの一般論です。レバレッジETFは日々の値動きを2倍にする設計のため、複数日にまたがる実際の下落率は、この単純計算とは異なります)。個別株の下落が、2倍に増幅されてプットの売り手を襲うのです。
この二重構造を、CMAとして整理します。NVYYのリスクは、二つの増幅装置が直列でつながっている姿だと私は見ています。
- 第一の装置:プット売りの非対称性(上値はプレミアムで限定、下値は急落で拡大)
- 第二の装置:原資産が2倍レバレッジのNVDL(NVDAの下落が約2倍に増幅される)
- 合成された姿:穏やかな時は高い分配金、急落時は増幅された損失が直撃
穏やかな相場が続く限り、NVYYは高い分配金という甘い顔を見せ続けます。しかし、その甘い顔の裏側には、急落時に増幅された牙をむく檻が仕込まれています。穏やかな時ほど、非対称のリスクは静かに牙を研いでいるのです。
名前がまとう「NVDA」の華やかさとは、正反対の顔がそこにあります。この構造を理解せずに資産形成の主軸へ据えることは、私にはとても勧められません(あくまで個人の見解です)。
自分ごとの実測――6株を握る人柱の含み損

ここまで仕組みを裁いてきましたが、他人の理屈だけでは腹に落ちません。そこで、私自身の保有実績をさらけ出します。私は2026年7月17日時点で、NVYYを6株保有しています。取得単価は、1株あたり19.03ドルでした。人体実験の一つとして、少額を投じて淡々とデータを取り続けている銘柄になります。
そのNVYYが、今どうなっているか。含み損の実額を、正直にお伝えします。2026年7月17日時点の株価12.43ドルで評価すると、評価損益はマイナス39.60ドルです(※第1章の株価12.65ドルは2026年7月22日終値であり、ここでの12.43ドルとは数営業日ずれた別時点のスナップショットです)。
円建てでは、マイナス5,708.93円になります。一方で、これまでに累積で受け取った分配金は26.71ドル(円建て4,220.88円)です。含み損と受取分配金を差し引いても、私の実際の保有成績はマイナス圏にとどまっているのです。
その結果、私個人のトータルリターン率(分配金を含めた総合損益の率)は、マイナス8.3509%になります。ここで、CMAとして必ず添えておくべき注記があります。このマイナス8.3509%は、為替の影響を含んだ円建てで計算した数字です。
円安がドル建ての含み損を円換算でいくらか和らげているため、ドル建てのみで大まかに見ると、体感はもう少し厳しくなります(※ドル建て概算では、含み損39.60ドルと累積分配26.71ドルを取得原価114.18ドル=19.03ドル×6株で割ると、およそマイナス11%台になります。円安が円換算ベースの痛みを緩和しているのです)。
一点、数字の透明性のために補足します。円換算に使う為替レートは、取得時・受取時・現在時点でそれぞれ異なる実勢レートを用いています。
取得時は取得日当時のレート、累積分配金は各支払日当時のレートで積み上げ、評価損益は2026年7月17日時点のレートで換算しているためです。同じ6株のポジションでも、いつの為替を当てるかで円換算後の見え方が変わります。一つの固定レートで単純換算した数字ではない、という点を明記しておきます。
数字の見え方には、通貨という化粧が乗ります。円建てで見るか、ドル建てで見るか。それだけで、同じ保有実績の顔つきが変わって見えるのです。「利回り134%」の看板と、人柱の実際の成績マイナス8.3509%の落差を、どうか記憶にとどめてください。派手な利回りの数字と、一人の投資家が握る現実の損益は、まったく別のものなのです。
もう一つ、大切な視点を添えます。ファンドの過去12ヶ月利回りが134.57%であることと、私の保有成績がマイナスであることは、矛盾しません。理由は、私が買った価格と、分配金を受け取れた期間が、看板の数字とは違うからです。
同じ銘柄でも、いつ・いくらで買ったかで、見える景色はまるで違うのです。ファンド全体の期間利回りと、個人の保有実績は、切り離して考えるべき別々の数字だと私は考えています。次章では、その成績をさらに削る、コストとNISAの壁を見ていきます。
経費率とNISAの壁――利回りの裏で削られるもの

自分の含み損という生々しい数字を見た後だからこそ、次は器そのもののコストへ目を向けます。まず経費率です。NVYYの経費率は、年1.15%になります。
経費率(ファンドを保有するあいだ毎年差し引かれる運用コスト)は、リターンを静かに削り続ける存在です。一般的なインデックスETFの経費率が年0.1%前後にとどまることを思えば、その10倍前後の水準になります。
ただし、この1.15%には見過ごせない注記が付きます。グラニットシェアーズの公式ファクトシート(2026年4月23日時点)によれば、1.15%は手数料減免後の数値、すなわちNet Annual Operating Expense Ratio(減免後の総経費率)です。減免前のTotal Annual Operating Expense Ratio(減免前の総経費率)は、年10.07%にのぼります。
この減免措置には期限もあります。グラニットシェアーズ・アドバイザーズは、ファンドの総経費が1.15%を超えないよう、2026年12月31日まで契約上手数料を減免することに合意しています。
表面上の1.15%は、減免前の実に約9倍もの経費率を、時限的な措置で覆い隠した数字なのです。裏を返せば、この減免契約が更新されなければ、経費率は文字どおり跳ね上がる可能性があります。
この1.15%というコストは、分配金が細った局面でも、律儀に毎年引かれ続けます。分配金がしぼんでも、コストはしぼまない。第3章で見たとおり、NVYYの週次分配金はこの約1年1ヶ月で約78.35%も細りました。
その一方で、経費率は1.15%のまま変わりません。痩せていく分配金と、変わらないコスト。この非対称も、冷静に見ておくべき点になります。
コストに加えて、器の規模も見ておきましょう。NVYYの純資産総額は、約3,627万ドルです。発行済み株式数は293万株になります。
米国の大型ETFが数百億ドル規模であることを思えば、こぢんまりとした器です。運用資産が小さいファンドには、繰り上げ償還(運用が続けられず、ファンドが途中で強制終了されること)のリスクが相対的に高まる、という一般的な傾向があります。桁外れの看板利回りの裏で、ファンドとしての足腰は決して太くないのです。
次に、日本の個人投資家が最初に躓く壁――NISAの問題に触れます。ここは、慎重に事実と見立てを分けて書きます。NVYYが日本のNISA成長投資枠の対象かどうかは、私が調べた範囲では確たる裏付けが得られませんでした。
したがって、断定はしません。ただし、同種の高分配・オプション戦略型ETFは、NISA成長投資枠の対象外とされるケースが一般的です。姉妹的な位置づけの週次高分配ETFは、いずれも対象外と整理されてきました。
なぜ対象外になりやすいのでしょうか。理由は、金融庁がNISA成長投資枠から一定の商品を除外する基準にあります。毎月・毎週といった高頻度で分配を行う商品や、複雑なデリバティブ(金融派生商品)戦略を用いる商品は、長期の資産形成にそぐわないとして除外されやすい傾向があるのです。
NVYYは週次分配で、しかも2倍レバレッジへのプット売りという複雑な戦略を用います。この特徴からすると、NVYYもNISA成長投資枠の対象外である可能性が高いと私は見ています(ただし、断定はできません)。
ただし、ここで一つ、大切な補足を挟みます。NISA成長投資枠の対象可否は、証券会社によって取り扱いが異なり得ますし、制度の運用も時とともに変わります。したがって、NVYYがNISA枠で買えるかどうかは、必ずご自身で、各証券会社の最新情報を個別にご確認ください。本記事の記述は、あくまで一般論としての見立てにとどまります。
仮に対象外であれば、分配金にはしっかり課税がかかり、あなたの手取りは看板の利回りよりさらに目減りします。税の壁を無視した利回りは、絵に描いた餅になりかねないのです。
NVYYに向く人・向かない人――夜更けの実験ノートを閉じる前に

気づけば、グラスの炭酸水は、泡がすっかり抜けてただの水になっていました。窓の外の住宅街は、なお静まり返っています。注いだ直後はあれほど元気に弾けていた泡が、時間とともに音もなく消えていく。桁外れの利回りを掲げながら、分配金が静かに細っていくNVYYの姿が、その抜けた炭酸とどこか重なって見えました。
利回り134%という数字に心惹かれる気持ちは、私自身にもよく分かります。だからこそ、その裏側まで一緒に見ておきたいのです。ここまでの講義を、結論として束ねます。
NVYYは、NVIDIAの名を掲げながら、その実態はNVDA本体ではなく2倍レバレッジのNVDLへのプット売りで、週次収益を増幅する装置でした。分配金は設定から1年以上を経てなお96.81%がROCとなる高ROC体質で、週次分配はこの約1年1ヶ月で約78.35%細りました。
上昇益はプレミアムに限定され、下落は2倍に増幅されて直撃します。NVYYの「NVDA」という名前は、安全の証明ではなく、複雑な仕組みを覆い隠す看板なのです。
では、NVYYに向く人と向かない人を整理しましょう。
| 向く人 | 向かない人 |
|---|---|
| 失っても構わない少額を実験枠に充てられる人 | 資産形成の主軸を任せたい人 |
| プット売りと2倍レバレッジの仕組みを理解している人 | 「NVDA」の名前だけで安心する人 |
| 分配金の増減と資産価値を切り離して考えられる人 | 高い分配利回りを純粋な収益と信じ込む人 |
| 小規模ファンドの償還リスクを許容できる人 | 元本をしっかり守りたい人 |
誤解しないでください。NVYYは、使い道を選べば道具になります。金額の上限を決めた実験枠として、2倍レバレッジへのプット売り戦略の呼吸を体感するには興味深い銘柄です。私自身、6株を握り、16銘柄の人体実験の一つとして淡々とデータを取り続けています。
しかし、「NVDA」という名前の華やかさを信じて主軸に据えた瞬間、その牙はこちらを向きます。脇役に徹させれば実験道具、主軸に据えれば看板の裏に潜む非対称リスク。この一線を越えるかどうかで、NVYYの顔はまるで変わるのです。
夜更けの実験ノートを閉じる前に、あらためてお伝えします。「NVDA」の四文字が与える華やかさに手を伸ばすなら、まずその中身を疑ってください。名前が約束するのはNVIDIAへの素直な連動ではなく、2倍レバレッジへのプット売りという複雑な現実です。
私は今週も、細っていく分配金と、非対称に揺れるリスクを、淡々と記録し続けます。あなたが桁外れの利回りの看板に手を伸ばす前に、どうかもう一度、この深夜の講義を思い出してください。人柱の続報は、この記録で欠かさずお届けします。次にどの銘柄の看板を剥がすことになるのか、それもまた同じ姿勢で見届けるつもりです。
📌 免責事項本記事は情報提供を目的としており、投資勧誘を目的としたものではありません。記載の数値は特定時点の実績であり、将来の成果を保証するものではありません。高分配型ETFには元本毀損・価格変動・分配金減少のリスクがあります。税務やNISA対象可否の取り扱いは個々の状況や証券会社の対応により異なるため、具体的な判断は税理士等の専門家にもご相談ください。投資判断はご自身の責任において行ってください。なお、筆者は本記事で取り上げるNVYYを保有しています。
参考一次情報ソース一覧– NVYY基本情報(正式名称「GraniteShares YieldBOOST NVDA ETF」・設定日2025年5月13日・経費率1.15%・分配頻度<週次>・投資戦略<NVDA本体ではなくNVDL=2x Long NVDA Daily ETFに対するプットオプション売却で週次インカムを生成/NVDAには直接投資しない/売却プットの権利行使価格レンジ40%OTM〜10%ITM・満期1週間〜1ヶ月>):GraniteShares公式サイト https://graniteshares.com/ (2026年7月22日確認)- NVYY経費率の内訳(Management Fees 0.99% Per Annum/Total Annual Operating Expense Ratio<減免前の総経費率>10.07% Per Annum/Net Annual Operating Expense Ratio<減免後・本文記載の1.15%>1.15% Per Annum/GraniteShares Advisors LLCが「ファンドの総経費が1.15%を超えないよう2026年12月31日まで契約上手数料を減免することに合意している」旨の注記あり):GraniteShares公式ファクトシート(as of 2026年4月23日・2026年7月22日確認)- NVYY株価・利回り・規模(現在株価12.65ドル<2026年7月22日終値>・52週高値28.30ドル・52週安値12.22ドル・純資産総額約3,627万ドル・発行済み株式数293万株・TTM分配金利回り134.57%・過去12ヶ月分配金合計17.02ドル):stockanalysis.com(2026年7月22日確認)- NVYY分配金のROC開示(2026年6月9日支払い<基準日2026年6月5日>0.12955ドルのうち96.81%がReturn of Capital=元本払戻金/2026年7月7日支払い<基準日2026年7月2日>0.12029ドルのうち31.56%がReturn of Capital、いずれもGAAP基準):SEC 19(a)通知書(PDF直接確認・2026年7月確認)- NVYY週次分配金推移(2025年6月6日0.5080ドル〜2026年7月17日0.1100ドル、欠落なく連続確認):筆者ポートフォリオ管理DB(確定データ)。※2025年6月6日0.5080ドル→2026年7月17日0.1100ドルの約78.35%減は筆者算出((0.5080−0.1100)÷0.5080×100=78.35%)。※2026年5月22日0.2105ドル→5月29日0.1277ドルの約39.3%の段差は事実のみ記載(原因の一次情報は未確認のため推測しない)- 原資産NVDLの株式分割(2026年6月26日付で3対1のフォワード株式分割を実施/NVYY自体は分割されていない):GraniteShares公式情報(2026年7月確認)- 筆者保有実績(2026年7月17日スナップショット:保有6株・取得単価19.03ドル・評価損益-39.60ドル<株価12.43ドル時点>・円建て評価損益-5,708.93円・累積受取分配金26.71ドル<円建て4,220.88円>・トータルリターン率-8.3509%<為替込みの円建て>):筆者ポートフォリオ管理DB(承認済みデータ)。※ドル建て概算約-11%台は筆者算出(含み損39.60ドルと累積分配26.71ドルを取得原価114.18ドル=19.03ドル×6株で割った概算)- NISA成長投資枠の対象可否に関する一般的整理(NVYYの対象可否は確証が得られず断定しない・高分配型/週次分配/複雑なデリバティブ戦略型ETFは金融庁の除外基準により対象外とされるケースが一般的・対象外である可能性が高いと見立て):筆者による一般論としての整理(最終的な対象可否は各証券会社の最新情報を要確認)- 第4章のプット売り損益例(100ドル・行使価格95ドル・プレミアム5ドル・急落70ドル・損失25ドル・差引20ドル)はすべて「※仮定計算例」であり、NVYYの実際の権利行使価格ではない。NVDLの2倍レバレッジ説明(NVDA1割下落→NVDL理論上約2割下落)は2倍レバレッジ商品一般の仕組み説明であり、特定の実測値ではない(「日次」「理論上」「複数日では単純計算と異なる」と明示)- 第6章の小規模ファンドの繰り上げ償還リスクに関する記述は、特定の一次情報に基づく実測ではなく、筆者(CMA)の一般的知見に基づく一般論である






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