ども♪アラフィフの「人柱」ブロガーです。
9月に入って最初の金曜日、船橋の朝は五時前からうっすら明るくなっていました。夏の湿気はまだ抜けきらず、窓を開けると生ぬるい風が入ってきます。
コーヒーを淹れて、パソコンの前に座り、SEC(米国証券取引委員会)のサイトからPDFを2本落としました。バークシャー・ハサウェイの「持ち株リスト(13F)」と「四半期決算書(10-Q)」です。
私はふだん、高配当ETFの分配金が口座に何円入ったかを、1円単位で数える実験をしています。証券アナリスト(CMA)とFPの資格は持っていますが、やっていることは地味な家計簿づけに近いです。
その私が、60年以上も普通株の配当をほぼ出していない会社の決算を読むと、毎回、目が覚めます。「分配金の額」を成績表にしている自分の物差しが、ここではまったく通用しないからです。
なお本記事では、ドル建ての数字に1ドル=156円で概算した円換算を併記します(2026年9月上旬の水準。為替レートは日々動きます)。
「持ち株リスト」と「四半期決算書」、2枚の紙で見えるものと見えないもの

バークシャーの投資戦略を追うとき、公開情報は主に2種類あります。
1つ目が「大口投資家の持ち株リスト(Form 13F)」です。プロの運用会社が「いま何の米国株を持っているか」を四半期ごとに公開する手札リストです。
最新版は2026年6月30日を基準日として、2026年8月14日に提出されました(受付番号 0001193125-26-352200)。
2つ目が「公式の四半期決算書(Form 10-Q)」です。会社全体の3ヶ月ごとの家計簿で、貸借対照表やキャッシュフロー計算書、巨額の現金残高まで載っています。最新版は2026年6月30日期です(受付番号 0001193125-26-341032)。
この2枚は役割が違います。「何の株を持っているか(手札)」は持ち株リスト(13F)に、「現金がいくら動いたか(財布の中身)」「どの会社を丸ごと買ったか」「自社株買いをしたか」は四半期決算書(10-Q)にしか書かれていません。
さらに、13Fに載らないものがあります。日本の5大商社は東京証券取引所の上場なので、そもそも13Fの対象外です。
いつでも現金化できる米国短期国債(T-Bills:利息がつく現金同等物)の3,249億ドル(約50.7兆円)、鉄道のBNSFや保険のGEICOのような完全子会社、現金そのものも載りません。
だから「バフェット銘柄の一覧」だけを眺めても、戦略の半分も見えません。本記事は13Fと10-Q、それにアルファベット側の10-Qまで含めて、2026年上期のバークシャーを組み立て直します。
現金の山は、ついに増えるのを止めた

まず、いちばん話題になる現金から見ていきます。
四半期決算書(10-Q)のMD&A(経営陣による財務分析)は、保険・その他事業の「現金と短期国債(T-Bills)」を、未決済分を引いた一貫指標で示しています。
その数字が、2026年3月末の3,735億ドル(約58.3兆円)から、6月末は3,592億ドル(約56.0兆円)へ。143億ドル(約2.2兆円)減りました。
貸借対照表の額面でも、現金351億ドル(約5.5兆円)と短期国債(T-Bills)3,249億ドル(約50.7兆円)で、前四半期を下回っています。
小さな減少に見えますが、意味は小さくありません。バークシャーの現金は14四半期にわたって積み上がり続けてきました。
その連続記録が止まり、初めて前の四半期を下回ったのが、この2026年4〜6月です。
経営陣のスタンスは変わっていません。決算書は「財務の強靭さと余剰流動性は常に最重要」と述べ、自社株買いで「現金と短期国債」の合計を300億ドル(約4.7兆円)未満には落とさない、と明記しています。
つまり山を崩す話ではなく、積むのをやめた、という段階です。
背景には金利があります。保険事業の投資収益(税引後)は第2四半期に前年同期比で9.1%減、上期で8.3%減でした。10-Qはその理由を「金利低下による受取利息の減少」と説明しています。
短期国債の利回りが下がってくると、現金を寝かせ続けること自体にコストの意識が働きます。利回りが高かった時期と、いまとでは前提が違うわけです。
2026年6月末、バークシャーは何を持っていたか

13Fの中身です。株式ポートフォリオの時価は合計で約2,992億ドル(約46.7兆円)、銘柄数は26でした。
上位はこの並びです。
- アップル(AAPL、iPhoneのメーカー):時価659.5億ドル(約10.3兆円)、構成比22.0%
- アメリカン・エキスプレス(AXP、カード決済会社):512.8億ドル(約8.0兆円)、17.1%
- アルファベット(GOOGL/GOOG、グーグルの持株会社):377.6億ドル(約5.9兆円)、12.6%
- コカ・コーラ(KO):325.1億ドル(約5.1兆円)、10.9%
- バンク・オブ・アメリカ(BAC、米大手銀行):275.4億ドル(約4.3兆円)、9.2%
10-Qの注記によると、上位5銘柄(アルファベット、アメックス、アップル、バンク・オブ・アメリカ、コカ・コーラ)だけで株式時価の66%を占めます。
ただし、この66%は10-Qの注記が持分法適用銘柄を除いた株式時価を分母にした数字で、本文でここまで並べた構成比(13F総額の約2,992億ドルが分母)を上位5銘柄ぶん単純合算した約72%とは、基準が違います。
分散しているようで、実はかなり集中したポートフォリオです。
四半期での動きを「動詞」で見ると、こうなります。
買い増したのは、アルファベット(株数で約83%増、約4,810万株、金額で約170億ドル=約2.7兆円)、デルタ航空(約44%増)、住宅建設のレナー(約30%増)、百貨店のメイシーズ(約142%増)。
減らしたのは、キャピタル・ワン(約58%減)、鉄鋼のニューコア(約52.5%減)、スーパーのクローガー(約22%減)、バンク・オブ・アメリカ(約5.9%減)、アライ・ファイナンシャル(約6.9%減)。
全部売ったのが、ワインとスピリッツのコンステレーション・ブランズ(約9,493万ドル=約148億円分)。買って1年ほどで手仕舞いました。
ごく少額ですが、住宅建設のD.R.ホートンが新しく入っています。
一方で、アップル、アメックス、コカ・コーラのコア3銘柄は、1株も動かしていません。
金融株を減らし、住宅・航空関連をわずかに増やし、コア3銘柄は据え置く。これが上期の絵柄です。
なお、バンク・オブ・アメリカとチャブは、この四半期にCUSIP(証券識別番号)や名称の表記が変わり、機械的にデータを比べると「新規+消滅」に見えます。実体は連続保有で、バンク・オブ・アメリカは削減、チャブは変わらずです。
クラフト・ハインツとオキシデンタル・ペトロリアムは、持分法(保有先の損益を持ち分に応じて取り込む会計処理)の適用対象で、上の時価テーブルとは別計上になっています。
オキシデンタルについては2019年以来の非議決権の永久優先株(2026年3月末時点の清算価値で約85億ドル=約1.3兆円)と普通株ワラントも別に保有しています。
もう1つ。13Fの総額(約2,992億ドル)と、貸借対照表に載る株式(約3,238億ドル=約50.5兆円)には、約240億ドル(約3.7兆円)の差があります。
この差の主因が、13Fに出てこない日本の5大商社などの非米国株です。「バフェット銘柄一覧」は、バークシャーの株式全体の一部でしかありません。
「1〜3月(Q1)」と「4〜6月(Q2)」で、様子がまるで違う

ここが今回いちばん伝えたいところです。上期をひとまとめにすると見えない断層が、四半期で割ると見えてきます。
10-Qのキャッシュフロー計算書から、株式の売買を四半期に分けます(第2四半期の値は、上期の10-Qから第1四半期の10-Qを引いて算出しました)。
第1四半期(1〜3月):株式の購入が159億ドル(約2.5兆円)、売却が241億ドル(約3.8兆円)。差し引き81億ドル(約1.3兆円)の売り越しです。
第2四半期(4〜6月):購入が235億ドル(約3.7兆円)、売却が37億ドル(約5,800億円)。差し引き198億ドル(約3.1兆円)の買い越しです。
第1四半期まで、バークシャーは14四半期連続で株式を売り越していました。「バフェットは現金を貯めて動かない」というイメージは、この記録に支えられていたわけです。
その次の四半期に、いきなり198億ドルの買い越し。売り切ったと思った瞬間に、倍以上の勢いで買い戻していた。
上期をならすと116億ドル(約1.8兆円)の買い越しです。報道が「約120億ドル買った」と「約200億ドル買った」で割れていたのは、前者が上期ネット、後者が第2四半期単体だからです。どちらも間違っていません。
もう1つの変化が自社株買いです。前年の同じ時期はゼロでした。それが2026年上期は約48億ドル(約7,500億円)、しかも大半が第2四半期です。
バークシャーの自社株買いは、規程上「CEOが、保守的に見積もった本源的価値を株価が下回ると判断したとき」に実行できます。
2026年1月1日にCEOへ就いたグレッグ・アベル氏(バフェット氏は会長として残留)が、「自社株は割安だ」と最初の判断を下したシグナル、と読めます。
アルファベットに100億ドルを直接入れた

アルファベットの買い増しは、13Fを見るだけなら「株数が増えた」で終わります。でも、アルファベット側の書類を開くと、話の質が変わります。
アルファベットの2026年6月30日期10-Q(受付番号 0001652044-26-000071)のItem 2「未登録株式の売却」に、こう書かれています。
「2026年6月4日、当社はクラス A 1,400万株およびクラス C 1,400万株、総額100億ドルの私募を、バークシャー・ハサウェイの関連会社に対して完了した」(原文の要旨)
つまり、市場で買い集めただけではありません。アルファベットが新しく発行した株を、バークシャーの関連会社が100億ドル(約1.6兆円)で直接引き受けています。
13Fのアルファベット増加分 約4,810万株のうち、2,800万株(100億ドル)がこの私募、残りの約2,000万株(約70億ドル=約1.1兆円)が市場での取得、と計算が合います。
この私募は、アルファベットのAIインフラ増強のための大型資金調達パッケージの一部でした。
同時期に、公募増資で純手取り約205億ドル(約3.2兆円)、6月5日には強制転換型優先株(あらかじめ決めた条件で必ず普通株に転換される優先株)で約190億ドル(約3.0兆円)、6月1日には最大400億ドル(約6.2兆円)の随時売出(ATM)枠の設定。社債発行は上期で純手取り約314億ドル(約4.9兆円)でした。
バフェット氏は長年、ビッグテックの巨額な設備投資には手を出しませんでした。その会社が、アベル体制1年目に、アルファベットのAI投資を支える資金の出し手として名乗りを上げた。慎重の代名詞のような会社が、です。
単なる株の買い増しではなく、企業金融への踏み込みです。
同じ上期、上場株では拾いにくくなった局面で、会社を丸ごと買う動きも続いています。
オキシデンタルから化学品事業を買ったOxyChem(2026年1月2日完了、約97億ドル=約1.5兆円)。住宅建設のテイラー・モリソン・ホーム(2026年5月31日合意、7月24日完了、1株72.50ドル=約1万1,310円の現金、約68億ドル=約1.1兆円)。
上期の事業買収は、取得した現金を差し引いて約97億ドルにのぼりました。
この決算から個人投資家が持ち帰れること

ここまでを、当ブログの読者に引き寄せて整理します。
1つ目。「一覧を眺める」より「四半期の差分を見る」ほうが情報量が多い、ということです。売り越しから買い越しへの反転、ゼロから再開した自社株買い。こういう動きの向きに、経営の判断が表れます。
スナップショットを1枚見て終わりにすると、いちばんおもしろい部分を取りこぼします。
2つ目。一次情報は誰でもたどれます。SECのEDGARで、バークシャーのCIK(企業識別番号)0001067983を開けば、13F-HRと10-Qが並んでいます。
日本語の解説記事で数字が食い違っていたら(今回も現金額は記事ごとにバラバラでした)、提出書類そのものに戻れば決着します。
3つ目。見えている表は全体の一部です。日本の5大商社は制度上13Fに出てきません。
決算書という「見えている部分」だけで全体を判断すると、大事な保有を見落とします。自分のポートフォリオも同じで、家計簿に載っていない資産や負債こそ、あとで効いてきます。
4つ目。バフェット氏からアベル氏へ交代した、というより、哲学は連続で、実行がやや前傾になった、という読み方が事実に近いです。
コア3銘柄を1株も動かさない胆力と、動くときは1四半期で200億ドル近く動かす決断。この両方が同居しています。
なお、純利益の見出しの数字には注意が必要です。第2四半期のバークシャー株主帰属の純利益は256億ドル(約4.0兆円。前年同期は124億ドル)ですが、これは保有株の未実現の評価損益を含むため、四半期ごとに大きく振れます。
バフェット氏は毎回「この数字は無視せよ」と言ってきました。オペレーティング面をセグメント利益(税引後)で見ると、第2四半期は鉄道のBNSFが前年同期比6.3%増、エネルギーのBHEが前年の7.0億ドル(約1,090億円)から8.9億ドル(約1,390億円)へ、製造・サービス・小売も36.0億ドル(約5,620億円)から44.7億ドル(約7,000億円)へと、そろって増益でした。
弱かったのは保険の2ラインです。保険引受益はGEICOの不振で13.1%減、保険投資収益も金利低下で9.1%減。鉄道・エネルギー・製造小売は伸び、保険が足を引っぱるという、方向の異なる動きが混在した四半期だったように見えます。
配当を1円もくれない巨人と、分配金を数える私

最後に、当ブログの物差しでこの決算を見ておきます。
バークシャーは、バフェット氏が経営権を握った1965年以降、普通株の配当は1967年以来ほとんど出していません。株主への還元は、事実上「事業への再投資」と「自社株買い」だけで通してきました。
2026年上期は、その自社株買いを久しぶりに再開しました。それでも、配当はゼロのままです。
私がやっているのは、真逆のことです。毎週、毎月、高配当ETFの分配金が口座に何円入ったかを数えて、記録して、記事にしています。「今月は何円もらえたか」が私の成績表です。
どちらが正しいか、という話にはしません。それは投資の目的と時間軸で変わります。
ただ、1円も配らない会社が、世界でいちばん有名な投資会社であり続けている。この事実は、「もらった分配金の額」を成績表にしている私の目を、決算を読むたびに覚まさせます。私が数えているのは、リターンの一部を切り出したものにすぎない、と。
アベル体制1年目の上期を1行でまとめるなら、「哲学は変えず、実行はやや前へ」です。現金の山を積むのをやめ、14四半期続いた売り越しから買い越しに転じ、自社株を買い戻し、AIには資金の出し手として入りました。
私の実験のほうは、来週もまた分配金を数えます。数える対象がまるで違うだけで、やっていることはたぶん同じです。手元に届いた一次情報を、他人の要約ではなく自分の目で読む。それだけは、巨人と人柱で共通しています。
📺 この記事の内容は、YouTubeでも音声解説付きでお届けしています。含み損の”生”リアクションや、記事にしきれない相場の温度感を知りたい方はぜひチャンネル登録を。
📌 免責事項 本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。記載した数値はすべてSEC提出書類などの一次情報に基づいていますが、正確性を保証するものではありません。投資判断は必ずご自身の責任で行ってください。個別の税務の扱いについては税理士等の専門家にご確認ください。ドル建ての数値には、読みやすさのため1ドル=156円で概算した円換算値を併記しています(2026年9月上旬の水準。為替レートは変動します)。
参考にした一次情報
- SEC Form 13F-HR、Berkshire Hathaway Inc、2026年6月30日基準(2026年8月14日提出、受付番号 0001193125-26-352200)
- SEC Form 13F-HR、同、2026年3月31日基準(受付番号 0001193125-26-226661)※前四半期比の算出に使用
- SEC Form 10-Q、Berkshire Hathaway Inc、2026年6月30日期(受付番号 0001193125-26-341032)
- SEC Form 10-Q、Berkshire Hathaway Inc、2026年3月31日期(受付番号 0001193125-26-202243)※第1四半期(1〜3月)と第2四半期(4〜6月)の対比に使用
- SEC Form 10-Q、Alphabet Inc、2026年6月30日期(2026年7月23日提出、受付番号 0001652044-26-000071)※6月4日のバークシャー向け100億ドル私募をItem 2に記載
- 補足参照(数値は上記一次情報で確定):CNBC、Forbes、fool.com(2026年8月15日前後のバークシャー13F報道)
お知らせ
私が高配当ETFの積立と分配金の受け取りに使っているのはマネックス証券です。米国株の定期買付や配当金の再投資設定が細かくできるので、「人柱」の実験用口座として使っています。口座開設や手数料の詳細は、各社の公式サイトでご確認ください。






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