失業保険の申請件数が表す雇用の実態
昔からある経済指標のひとつですが、近年になって注目されるようになった米国の経済指標が、「新規失業保険申請件数」です。 失業保険の申請件数が増えるということは、つまり失業する人が増えていることと同義ですから、景気がリセッションに入った可能性が高いと判断されます。
ただ、すべての労働者が失業保険でカバーされているわけではなく、失業者に対する保険受給者数 (State Benefits) のカバレッジは50%以下と低です。そのため、この統計から判断されるよりも実際の雇用状況が悪化している場合がありえます。
この経済指標は、景気の動きに敏感に反応するので、景気先行指数にも採用されています。経験則では、本指標は景気の谷 (ボトム)に2~3ヵ月先行してピークをつけます。
この数字を見る際のポイントは、数週間以上にわたって申請件数が万件を超えている場合は、景気悪化局面にあり、逆に長期にわたって申請件数が10万件を下回った場合は、景気回復局面にあると判断できることです。また数字を見る場合の注意点ですが、毎週公表されるという点に問題があります。
確かに、タイムリーな状況を把握するためには、頻度が高いほうが良いのですが、祝日や天災などの影響で数字のブレが大きくなるケースがあります。例えば、祝日の前には計数は減少します。そういうクセがあるので、実際に新規失業保険申請件数を見るときは、1週間の数字で判断するのではなく、数週間の傾向を見るようにしましょう。アナリストは一般的に4週の移動平均をベースに分析することが多いです。
本統計を読むうえでの注意点
- すべての労働者が失業保険でカバーされているわけではなく、失業者に対する保険受給者数 (State Benefits) のカバレッジは50%以下と低い。この統計から判断されるよりも実際の雇用状況が悪化している場合がありえます。
- 祝日や天災などの影響で、月次や週次の計数がかく乱される。 例えば、祝日の前には計数は減少する。
- マーケットが注目するのは、 前週比の増減であるが、 前週の数値は翌週、ほぼ改訂される。
- 不規則な動きをするために、アナリストは4週の移動平均をベースに分析することが多い。
米国の新規失業保険申請件数のHP
米国の雇用統計は、労働省雇用訓練局 (ETA)のウェブサイトで調べることができます。
労働省雇用訓練局 (ETA):https://oui.doleta.gov/unemploy/claims.asp
より簡単に確認する場合はFREDがおすすめです。
新規失業保険申請件数に関連する指標の説明
- 新規失業保険申請件数(ICSA: Initial Claims for Unemployment Benefits):
- これは、新たに失業保険を申請した人々の数を表します。毎週発表されるこの数値は、経済の短期的な動向を捉えるのに役立ち、失業が増加しているか、または減少しているかの即時の指標となります。突然の増加は、経済に対するネガティブなシグナルと見なされることが多いです。
- 継続失業保険申請件数(CCSA: Continued Claims for Unemployment Benefits):
- これは、すでに失業保険を受け取っている人々の数を表し、これも毎週更新されます。この数値は、失業状態がどの程度長引いているかを示す指標であり、経済の中長期的な健康状態を反映します。継続的に高い数値は、失業者が仕事を見つけるのに苦労していることを示す可能性があります。
- 保険失業率(IURSA: Insured Unemployment Rate):
- この率は、失業保険の対象となる労働力のうち、実際に失業保険を受給している人々の割合を示します。保険失業率は、労働市場の健全性をより広い視点から捉えるためのもので、経済全体の失業率と比較して解釈されることが一般的です。
新規失業保険申請件数:https://fred.stlouisfed.org/series/ICSA
継続失業保険申請件数:https://fred.stlouisfed.org/series/CCSA
保険失業率:https://fred.stlouisfed.org/series/IURSA
コメント