数値化された米国人の消費意欲
小売売上高は米国の景気を見るうえで重要な経済指標のひとつです。
なぜ重要なのかというと、米国では個人消費がGDPの7割を占めているからです。つまり経済活動の7割が、個人消費によって動かされているのです。そして、小売売上高は、個人消費全体の3分の1程度を占めています。
小売売上高が好調だと、株価にとってはプラス、 債券にとってはマイナス、為替にとってはドル高要因として作用します。 小売売上高が好調ということは、米国の景気が良いことを示すからです。ただし注意点があります。
小売売上高で把握できるのは、デパートやスーパーマーケットでの買い物、ガソリンスタンド、レストランなど、具体的なモノを通じての消費動向であり、飛行機に乗って出かけましたとか、どこかに旅行したとか、美容院に行ったとか、映画を観た、コンサートに行ったといったサービスに関連した消費については、把握できません。
あと、数字が名目値であることも要注意。名目値とは、物価上昇率を加味しない裸の数字と考えてください。名目値から物価上昇率を差し引いた数字が、「実質値」と呼ばれるもの。名目値と実質値は経済指標を見る際の基本なので、覚えておきましょう。
たとえば小売売上高が前年同月比で8%の伸びを見せたとします。8%の伸びは、かなり消費意欲が旺盛だと考えられるのですが、同じ期間で物価が8%上昇していたとしたらどうでしょうか。小売売上高の上昇率はすべて物価高によってもたらされただけの、見かけ倒しの数字ということになります。
逆に小売売上高が3%の伸びにとどまっていたとしても、物価上昇率が2%だとしたら、名目上の小売売上高が3%の伸びでも、実質的には5%伸びているのと同じことになります。
「実質値」=名目値- 物価上昇率
米国の小売売上高のHP
米国の小売売上高は、アメリカ合衆国総務省の統計局(Bureau of Labor Statistics, BLS)のウェブサイトで調べることができます。
アメリカ合衆国国勢調査局(U.S. Census Bureau)の小売業統計ページ:https://www.census.gov/retail/index.html
より簡単に確認する場合はFREDがおすすめです。
以下から、小売売上高を調べることができます。
小売売上高:https://fred.stlouisfed.org/series/RSAFS
小売売上高 自動車および部品ディーラーを除く:https://fred.stlouisfed.org/series/RSFSXMV
意外と知らない小売売上高の特徴
百貨店などの小売業の売上を、サンプル調査をベースに推計し発表しているものです。耐久財、 非耐久財に大分類されているが、 自動車販売のウェイトが高いのが特徴です。本統計は、速報値からの改訂幅が若干大きいという問題があるものの、米GDPの約7割は個人消費が占めているため、マーケットの注目度は非常に高いです。
また、インターネット通信販売の拡大基調により、 小売売上高全体に占める比率は2000年の5%台から19年は12%程度まで上昇しています。自動車を除いた数値も注目される。 コア小売売上高として、 自動車・ガソリン・建材・外食を除いた数字への注目度も高いです。
最後に小売売上高が発表れたとき株価や為替に影響を与えるため、以下のポイントに注目して見ることをおすすめします。
- 月次変動の確認: 前月比での売上高の増減を確認します。増加している場合は消費者の信頼感が高まっていることを示し、株価にポジティブな影響を与える可能性があります。
- 年次比較: 前年同月と比較して売上高がどの程度変動しているかを見ます。これにより、長期的なトレンドや季節的な変動を把握できます。
- セクター別分析: 小売セクターを細分化して、どのカテゴリーが好調であるかを確認します。例えば、高級品の売上が伸びている場合、富裕層の消費が活発であることを示し、関連する株式に注目が集まるかもしれません。
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