QQQという羊の皮――利回り60%超のTQQY、その正体は3倍レバレッジへのプット売りだった

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2026年8月中旬の船橋は、真昼の陽射しに炙られています。時刻は正午を少し回ったところ、気温はとうに35度を超えていました。窓の外のアスファルトからは、ゆらゆらと陽炎(かげろう=地面の熱で景色が揺れて見える現象)が立ちのぼっています。

遠くの街並みが、まるで水中の景色のように歪んで見えました。冷えた麦茶を片手に、私は米国市場の引け値と、TQQYという銘柄の名前を、じっと見つめていたのです。利回り60%超という景気のいい看板を掲げながら、実はQQQを一株も保有していない――そんな矛盾を抱えたETFの正体を、今日は解剖します。

申し遅れました。私は証券アナリスト(CMA)とFP資格を持つ、アラフィフの兼業ブロガーです。超高配当カバードコールETFを16銘柄、1年間まるごと自腹で人体実験しています。

今日の主役は、その実験群の中でも「名前と中身のねじれ」が際立つTQQY(GraniteShares YieldBOOST QQQ ETF)です。名前にこそ、米国ハイテク株指数の代名詞である「QQQ」を掲げています。しかし、その正体は、名前から受ける印象とは大きく異なるのです。

私がなぜ、うだるような真昼にわざわざTQQYの記事を書くのか。理由は、この銘柄が「QQQ」という馴染みの名前をまといながら、実態はまるで別物だからです。

TQQYは、QQQそのものを一株も保有していません。陽炎に歪む景色のように、名前と実態の距離は、想像以上に遠いのです。CMAとして仕組みを裁き、FPとして家計への意味へ翻訳する。命懸けの講義でお届けします。

目次

QQQを名乗る利回り60%超ETF――TQQYという装置の正体

QQQを名乗る利回り60%超ETF――TQQYという装置の正体

まず、TQQYが何をする機械なのかを解剖します。正式名称は「GraniteShares YieldBOOST QQQ ETF」です。運用会社グラニットシェアーズ(GraniteShares=米国のETF運用会社)が2025年2月26日に設定した、まだ生まれて1年半ほどの新しいファンドになります。

名前に含まれる「QQQ」は、ナスダック100指数に連動する超大型ETFの通称です。アップルやエヌビディアといった、米国ハイテク株の主役を束ねた、あの人気の代名詞になります。

TQQYの基本スペックを、まず一枚の表で俯瞰しましょう。派手な数字と地味な数字が、同居しているのが見えてきます。

項目内容
正式名称GraniteShares YieldBOOST QQQ ETF
ティッカーTQQY
設定日2025年2月26日
経費率年1.15%
現在株価12.67ドル(2026年7月21日終値)
52週高値/安値19.83ドル/12.41ドル
純資産総額約662万ドル(超小規模)
発行済み株式数530,001株
TTM分配金利回り60.23%
過去12ヶ月分配金合計7.63ドル
分配頻度週次

表の中で、まず目を奪われるのが利回りです。TTM分配金利回り(Trailing Twelve Months=過去12ヶ月の分配金合計をもとにした利回り)は、なんと60.23%になります。過去12ヶ月に支払われた分配金の合計7.63ドルを、現在株価12.67ドルで割った数字です。

株価とほぼ同額を、1年で分配金として配った計算になります。しかも分配の頻度は、月次でも四半期でもなく、毎週です。週ごとに現金が振り込まれる派手さこそが、TQQYの最大の売り文句になります。

TQQYは「YieldBOOST」というシリーズの一員です。YieldBOOST(イールドブースト=利回りを増幅させる、というグラニットシェアーズ独自の戦略ブランド)とは、オプションを売って高い分配金を生み出す仕組みを指します。

オプションを売ると、その対価としてプレミアム(オプション売却で受け取る現金)が手に入ります。TQQYはこのプレミアムを、週次の分配金として投資家に配る設計です。「利回りを増幅する装置」を名乗るだけあって、看板の数字は確かに派手なのです。

ただし、CMAとしてひと言添えておきます。60.23%という利回りは、あくまで過去12ヶ月の実績をもとにした後ろ向きの数字です。後ほど第3章で詳しく見ますが、TQQYの週次分配金は足元で細り続けています。直近の週次分配は0.0969ドルの水準まで下がってきました。

この細った水準が続けば、来期の実効利回りは看板の60.23%より低くなる公算が高いと私は読み解いています。看板の利回りは、今の実力ではなく過去の合計点なのです。

ここまでで、TQQYの輪郭が見えてきました。QQQの象徴を名前に掲げつつ、その実態はオプション売却で週次収益を増幅する装置です。しかし、名前の「QQQ」と中身のあいだには、決定的な乖離が潜んでいます。次章では、その乖離の核心――TQQYが本当は何にオプションを売っているのかに踏み込みます。

「QQQのプット売り」という誤解――実態は3倍レバレッジTQQQへのプット売り

「QQQのプット売り」という誤解――実態は3倍レバレッジTQQQへのプット売り

ここが、本記事で最も伝えたい核心になります。TQQYの名前を見た多くの人は、こう考えます。「QQQに対してオプションを売り、プレミアムを稼ぐ商品なのだろう」と。

実際、日本語で読める数少ない紹介記事の中にも、TQQYを「QQQのプットオプションを売る戦略」と説明しているものが見受けられます。指数に関連づけて理解を助ける説明であり、正論です。が、その一文だけを鵜呑みにすると、事実を取り違えてしまいます。

正確な事実を、グラニットシェアーズの公式説明から確認します。TQQYがオプションを売る相手は、QQQではありません。TQQYが実際に対象とするのは、TQQQ(QQQの日次値動きを3倍にして追う3倍レバレッジETF)なのです。QQQ本体ではなく、その3倍増幅版に対してプットを売っている。ここが、名前と実態の決定的な乖離になります。

用語を一つ、丁寧に補足します。プットオプション(Put Option=あらかじめ決めた価格で売る権利)を売るとは、「値下がりしたら決めた価格で買い取ります」と約束して、その対価にプレミアムを受け取る取引です。

TQQYはこの約束の相手を、値動きの穏やかなQQQではなく、値動きが3倍に荒れるTQQQに向けています。穏やかな指数ではなく、荒れ馬の側にプットを売っているのです。

TQQYの収益構造を、二重構造として整理しておきましょう。名前の印象と、実際の中身がどれだけ離れているかが見えてきます。

  • 名前の印象:QQQに連動する、あるいはQQQにオプションを売る商品
  • 実際の対象資産:QQQではなく、QQQの日次3倍値動きを狙うTQQQ
  • 収益手段:そのTQQQに対してプットオプションを売り、プレミアムを得る
  • 分配原資:受け取ったプレミアムを、週次で分配金として配る

さらに、売るプットの中身にも触れておきます。グラニットシェアーズの説明によれば、TQQYが売るプットの権利行使価格は、40%OTM(アウト・オブ・ザ・マネー=現値から離れた、行使されにくい価格)から10%ITM(イン・ザ・マネー=すでに行使されやすい価格)までのレンジで設定されます。

満期は1週間から1ヶ月です。つまりTQQYは、短い満期のプットを次々と売り替えながら、TQQQのボラティリティ(値動きの荒さ)を現金に換えているのです。

なぜ、この乖離がそれほど危険なのでしょうか。理由は、リスクの質がまるで変わるからです。仮にQQQに直接連動するETFなら、値動きは指数とほぼ同じで、素直に理解できます。

ところがTQQYは、3倍レバレッジのTQQQへのプット売りという、増幅と非対称性を二重に抱えた構造を持ちます。相場が穏やかなうちは高い分配金の顔を見せますが、急落局面では牙をむきます。その檻の仕組みは、第4章でたっぷり解剖します。

名前の「QQQ」を信じて、素直なハイテク連動商品だと思い込む。その思い込みこそが、TQQYで最初に踏む落とし穴になります。「QQQへのプット売り」と「3倍レバレッジTQQQへのプット売り」は、似て非なるものなのです。

名前の羊の皮を剥がせば、そこには3倍に荒れる原資産が潜んでいます。次章では、その原資産が生み出す分配金が、設定初期からどう変質してきたかを追います。

分配金急減の軌跡――94.57%がROCだった特別分配から、細っていく週次分配へ

分配金急減の軌跡――94.57%がROCだった特別分配から、細っていく週次分配へ

名前と実態の話が続いたので、分配金の実額に踏み込みます。ここに、TQQYのもう一つの顔があります。まず注目すべきは、設定からほどない2025年5月28日に支払われた分配金です。その額は1株あたり0.77142ドル、基準日は2025年5月23日でした。後の週次分配金と比べると、けた違いに大きな金額です。

ところが、この分厚い分配金には、注意すべき中身がありました。SECに提出された19(a)通知書(米国証券取引委員会への分配金の源泉開示通知)によれば、この0.77142ドルの分配金は、その94.57%がROC(Return of Capital=元本払戻金)だったと開示されているのです。

ROCとは、運用で稼いだ利益ではなく、投資家が預けた元本を返している部分を指します。つまり、受け取った分配金の大半は、自分のお金が形を変えて戻ってきただけだったのです。

ここでFPとして、家計簿のつけ方に一つ注意を促します。ROCが大半を占める分配金は、収入欄ではなく「元本の払い戻し」欄に記帳するのが実態に近い扱いです。

収入として記帳すると家計は潤っているように錯覚しますが、実際は自分の元本が目減りしているだけの部分が大きいからです。分配金という名前が付いていても、その中身が利益とは限らない。設定初期のTQQYは、その典型を見せていたのです。

では、その後の週次分配金はどう推移したのでしょうか。2026年に入ってからの、実額で確認できる分配金を並べます。

基準日分配金
2025年5月28日支払い(特別分配)0.77142ドル(うち94.57%がROC)
2026年1月2日0.1492ドル
2026年1月9日0.1499ドル
2026年2月6日0.1427ドル
2026年3月6日0.1368ドル
2026年4月2日0.1205ドル
2026年5月1日0.1267ドル
2026年5月29日0.1070ドル
2026年6月5日0.1025ドル
2026年6月18日0.0981ドル
2026年6月26日0.1007ドル
2026年7月2日0.0981ドル
2026年7月10日0.0969ドル

一つ、データの扱いに誠実な注記を添えます。2025年5月の特別分配と、2026年1月以降の週次分配とのあいだ(2025年6月から12月まで)の分配額は、本記事の一次情報収集の対象には含めていません。

したがって、その期間を含めた「連続した推移」としては語りません。ここでは、実額を確認済みの2026年1月2日以降を、分析の本流として扱います。扱っていない期間を、なめらかな下降線でつないで語ることはしないのです。

その本流の数字を見ると、流れは明快です。2026年1月2日に0.1492ドルあった週次分配金は、2026年7月10日には0.0969ドルまで細りました。この直近半年での減少率は、約35.0%になります(計算式:(0.1492−0.0969)÷0.1492×100=35.05%)。

半年で、1回あたりの分配金が3分の1以上も溶けた計算です。設定初期の分厚い特別分配から、細っていく週次分配へ。分配金の軌跡は、右肩下がりの一本道をたどっているのです。

実は私自身も、このTQQYを7株保有しています。この右肩下がりの分配金が、私自身の含み損にどう跳ね返っているのか。その実測値は、第5章で包み隠さずお伝えします。

CMAとして、この減少の背景を読み解きます。結論から言えば、分配金の細りは相場の凪(なぎ)が主因だと私は考えています。理由は、TQQYの分配原資がオプションプレミアムだからです。プレミアムの大きさは、原資産であるTQQQのボラティリティに強く左右されます。

相場が荒れるほどオプションは高く売れ、相場が凪ぐほど安くなります。分配金は、相場の恐怖を換金した対価なのです。具体例として、ボラティリティが落ち着いた局面では、売れるプットのプレミアムが痩せ、その換金物である週次分配金も痩せていきます。

派手な看板利回り60.23%の内側で、原資そのものが確かに痩せ細っている。この事実を、まず直視する必要があります。利回りの数字は過去の合計、分配金の実額は今の体温です。次章では、この分配金を生み出す仕組みが、なぜ急落局面で牙をむくのか。その非対称リスクの構造に踏み込みます。

上は天井、下は底が抜ける――プット売り×3倍レバレッジという非対称の檻

上は天井、下は底が抜ける――プット売り×3倍レバレッジという非対称の檻

TQQYの利回りが派手でも、私が警戒を解かない理由。それは、この銘柄が抱える構造的な非対称性にあります。プットオプションを売る戦略には、宿命的な歪みがあります。得られる利益はプレミアムの範囲で頭打ち、被る損失は相場の急落とともに膨らむという歪みです。上と下で、リスクの姿がまったく釣り合っていないのです。

仕組みを、単純な数値で確認しましょう(※仮定計算例。あくまで理解のための仮定計算であり、TQQYの実際の権利行使価格ではありません)。ある資産が100ドルのとき、権利行使価格95ドルのプットを売り、プレミアム5ドルを受け取ったとします。

満期までに価格が95ドルを上回って推移すれば、プットは行使されず、5ドルは丸ごと収益になります。上昇相場でどれだけ資産が値上がりしても、プットの売り手の取り分は、受け取ったプレミアム5ドルまでです。上値の果実は、ここできっぱり断ち切られます

問題は下落局面です。同じ前提で考えます(※仮定計算例。TQQYの実際の権利行使価格ではありません)。資産が70ドルまで急落したとします。プットの売り手は、95ドルで買い取る義務を負います。

95ドルとの差額25ドルの損失から、受け取ったプレミアム5ドルを引いても、差し引き20ドルの損失が残ります。受け取りは5ドルで頭打ち、損失は20ドルへ膨らむのです。上は天井、下は底が抜ける。プット売りの非対称性が、ここにむき出しになります。

さらに恐ろしいのが、TQQYの原資産が「3倍レバレッジのTQQQ」である点です。第2章で見たとおり、TQQYがプットを売る相手は、QQQの日次3倍値動きを狙うTQQQでした。

仮にQQQが1割下落すれば、日次3倍レバレッジのTQQQは、理論上およそ3割下落します(※「日次3倍」「理論上」という条件付きの一般論です。レバレッジETFは日々の値動きを3倍にする設計のため、複数日にまたがる実際の下落率は、この単純計算とは異なります)。指数の下落が、3倍に増幅されてプットの売り手を襲うのです。

この二重構造を、CMAとして整理します。TQQYのリスクは、二つの増幅装置が直列でつながっている姿だと私は見ています。

  • 第一の装置:プット売りの非対称性(上値はプレミアムで限定、下値は急落で拡大)
  • 第二の装置:原資産が3倍レバレッジのTQQQ(QQQの下落が約3倍に増幅される)
  • 合成された姿:穏やかな時は高い分配金、急落時は増幅された損失が直撃

穏やかな相場が続く限り、TQQYは高い分配金という甘い顔を見せ続けます。しかし、その甘い顔の裏側には、急落時に増幅された牙をむく檻が仕込まれています。穏やかな時ほど、非対称のリスクは静かに牙を研いでいるのです。

名前がまとう「QQQ」の親しみやすさとは、正反対の顔がそこにあります。この構造を理解せずに資産形成の主軸へ据えることは、私にはとても勧められません(あくまで個人の見解です)。

自分ごとの実測――7株を握る人柱の含み損

自分ごとの実測――7株を握る人柱の含み損

ここまで仕組みを裁いてきましたが、他人の理屈だけでは腹に落ちません。そこで、私自身の保有実績をさらけ出します。私は2026年7月17日時点で、TQQYを7株保有しています。取得単価は、1株あたり16.20ドルでした。人体実験の一つとして、少額を投じて淡々とデータを取り続けている銘柄になります。

そのTQQYが、今どうなっているか。含み損の実額を、正直にお伝えします。2026年7月17日時点の株価12.51ドルで評価すると、評価損益はマイナス25.83ドルです(※第1章の株価12.67ドルは2026年7月21日終値であり、ここでの12.51ドルとは4営業日ずれた別時点のスナップショットです)。

円建てでは、マイナス3,477.93円になります。一方で、これまでに累積で受け取った分配金は16.66ドル(円建て2,636.74円)です。含み損と受取分配金を差し引いても、私の実際の保有成績はマイナス圏にとどまっているのです。

その結果、私個人のトータルリターン率(分配金を含めた総合損益の率)は、マイナス4.7533%になります。ここで、CMAとして必ず添えておくべき注記があります。このマイナス4.7533%は、為替の影響を含んだ円建てで計算した数字です。

円安がドル建ての含み損を円換算でいくらか和らげているため、ドル建てのみで大まかに見ると、体感はもう少し厳しくなります(※ドル建て概算では、含み損25.83ドルと累積分配16.66ドルを取得原価113.40ドルで割ると、およそマイナス8%台になります。円安が円換算ベースの痛みを緩和しているのです)。

一点、数字の透明性のために補足します。円換算に使う為替レートは、取得時・受取時・現在時点でそれぞれ異なる実勢レートを用いています(※取得時は取得日当時のレート、累積分配金は各支払日当時のレートで積み上げ、評価損益は2026年7月17日時点のレートで換算しています。同じ7株のポジションでも、いつの為替を当てるかで円換算後の見え方が変わる点にご留意ください)。一つの固定レートで単純換算した数字ではない、という点を明記しておきます。

数字の見え方には、通貨という化粧が乗ります。円建てで見るか、ドル建てで見るか。それだけで、同じ保有実績の顔つきが変わって見えるのです。「利回り60%」の看板と、人柱の実際の成績マイナス4.7533%の落差を、どうか記憶にとどめてください。派手な利回りの数字と、一人の投資家が握る現実の損益は、まったく別のものなのです。

もう一つ、大切な視点を添えます。ファンドの過去12ヶ月利回りが60.23%であることと、私の保有成績がマイナスであることは、矛盾しません。理由は、私が買った価格と、分配金を受け取れた期間が、看板の数字とは違うからです。

同じ銘柄でも、いつ・いくらで買ったかで、見える景色はまるで違うのです。ファンド全体の期間利回りと、個人の保有実績は、切り離して考えるべき別々の数字だと私は考えています。次章では、その成績をさらに削る、コストとNISAの壁を見ていきます。

経費率6倍とNISAの壁――派手な利回りの裏で削られるもの

経費率6倍とNISAの壁――派手な利回りの裏で削られるもの

戦略のリスクと自分の実績を見たので、次は器そのもののコストへ目を向けます。まず経費率です。TQQYの経費率は、年1.15%になります。経費率(ファンドを保有するあいだ毎年差し引かれる運用コスト)は、リターンを静かに削り続ける存在です。名前に掲げるQQQ本体の経費率と並べると、その重さがよくわかります。

種類経費率の目安
QQQ(ナスダック100連動ETF)0.20%
TQQY1.15%

QQQの経費率は0.20%です。対してTQQYは1.15%、QQQのおよそ6倍のコストがかかります。オプションを短い満期で次々と組み替える手間賃だと思えば、理屈は通ります。しかし、その手間賃は分配金が細った局面でも、律儀に毎年引かれ続けるのです。分配金がしぼんでも、コストはしぼまない。ここは冷静に見ておくべき点になります。

コストに加えて、器の小ささも見逃せません。TQQYの純資産総額は、約662万ドルにとどまります。米国の大型ETFが数百億ドル規模であることを思えば、けた違いに小さい器です。

発行済み株式数も530,001株と、こぢんまりしています。運用資産が小さいファンドには、繰り上げ償還(運用が続けられず、ファンドが途中で強制終了されること)のリスクが相対的に高まる、という一般的な傾向があります。派手な看板の裏で、ファンドとしての足腰は決して太くないのです。

次に、日本の個人投資家が最初に躓く壁――NISAの問題に触れます。ここは、慎重に事実と見立てを分けて書きます。TQQYが日本のNISA成長投資枠の対象かどうかは、私が調べた範囲では確たる裏付けが得られませんでした。したがって、断定はしません。

ただし、同種の高分配・オプション戦略型ETFは、NISA成長投資枠の対象外とされるケースが一般的です。姉妹的な位置づけのULTY(複数の米国個別株を対象とするカバードコール戦略ETF)やYSPY(S&P500の3倍レバレッジ商品を対象とするカバードコール戦略ETF)といった週次高分配ETFも、いずれも対象外と整理されてきました。

なぜ対象外になりやすいのでしょうか。理由は、金融庁がNISA成長投資枠から一定の商品を除外する基準にあります。毎月・毎週といった高頻度で分配を行う商品や、複雑なデリバティブ(金融派生商品)戦略を用いる商品は、長期の資産形成にそぐわないとして除外されやすい傾向があるのです。

TQQYは週次分配で、しかも3倍レバレッジへのプット売りという複雑な戦略を用います。この特徴からすると、TQQYもNISA成長投資枠の対象外である可能性が高いと私は見ています(ただし、断定はできません)。

ただし、ここで大切な注記を添えます。NISA成長投資枠の対象可否は、証券会社によって取り扱いが異なり得ますし、制度の運用も時とともに変わります。したがって、TQQYがNISA枠で買えるかどうかは、必ずご自身で、各証券会社の最新情報を個別にご確認ください

本記事の記述は、あくまで一般論としての見立てにとどまります。仮に対象外であれば、分配金にはしっかり課税がかかり、あなたの手取りは看板の利回りよりさらに目減りします。税の壁を無視した利回りは、絵に描いた餅になりかねないのです。

TQQYに向く人・向かない人――真昼の実験ノートを閉じる前に

TQQYに向く人・向かない人――真昼の実験ノートを閉じる前に

気づけば、窓の外の陽炎は、いっそう強く景色を揺らしていました。冷えていた麦茶も、すっかりぬるくなっています。真昼の陽炎は、遠くの街並みを歪ませ、そこにありもしない水面を描き出します。名前の「QQQ」という涼しげな看板の奥に、3倍レバレッジという灼熱を隠したTQQY。その二面性が、揺らめく陽炎とどこか重なって見えました。

利回り60%という数字に心惹かれる気持ちは、私自身にもよく分かります。だからこそ、その裏側まで一緒に見ておきたいのです。ここまでの講義を、結論として束ねます。TQQYは、ハイテク指数QQQの名を掲げながら、その実態はQQQではなく3倍レバレッジのTQQQへのプット売りで、週次収益を増幅する装置でした。

設定初期の分配金は94.57%がROC、その後の週次分配は直近半年で約35.0%細りました。上昇益はプレミアムに限定され、下落は3倍に増幅されて直撃します。TQQYの「QQQ」という名前は、安全の証明ではなく、複雑な仕組みを覆い隠す羊の皮なのです。

では、TQQYに向く人と向かない人を整理しましょう。

向く人向かない人
失っても構わない少額を実験枠に充てられる人資産形成の主軸を任せたい人
プット売りと3倍レバレッジの仕組みを理解している人「QQQ」の名前だけで安心する人
分配金の増減と資産価値を切り離して考えられる人高い分配利回りを純粋な収益と信じ込む人
超小規模ファンドの償還リスクを許容できる人元本をしっかり守りたい人

誤解しないでください。TQQYは、使い道を選べば道具になります。金額の上限を決めた実験枠として、プット売り戦略の呼吸を体感するには興味深い銘柄です。私自身、7株を握り、16銘柄の人体実験の一つとして淡々とデータを取り続けています。

しかし、「QQQ」という名前の安心感を信じて主軸に据えた瞬間、その牙はこちらを向きます。脇役に徹させれば実験道具、主軸に据えれば羊の皮をかぶった非対称リスク。この一線を越えるかどうかで、TQQYの顔はまるで変わるのです。

真昼の実験ノートを閉じる前に、あらためてお伝えします。「QQQ」の三文字が与える安心感に手を伸ばすなら、まずその中身を疑ってください。名前が約束するのはハイテク指数への素直な連動ではなく、3倍レバレッジへのプット売りという複雑な現実です。

私は今週も、細っていく分配金と、非対称に揺れるリスクを、淡々と記録し続けます。あなたが派手な利回りの看板に手を伸ばす前に、どうかもう一度、この講義を思い出してください。人柱の続報は、この記録で欠かさずお届けします。

📌 免責事項本記事は情報提供を目的としており、投資勧誘を目的としたものではありません。記載の数値は特定時点の実績であり、将来の成果を保証するものではありません。高分配型ETFには元本毀損・価格変動・分配金減少のリスクがあります。税務やNISA対象可否の取り扱いは個々の状況や証券会社の対応により異なるため、具体的な判断は税理士等の専門家にもご相談ください。投資判断はご自身の責任において行ってください。

参考一次情報ソース一覧– TQQY基本情報(正式名称「GraniteShares YieldBOOST QQQ ETF」・設定日2025年2月26日・経費率1.15%・分配頻度<週次>・投資戦略<QQQではなくTQQQ=3x Long QQQ Daily ETFに対するプットオプション売却で週次インカムを生成/QQQには直接投資しない/売却プットの権利行使価格レンジ40%OTM〜10%ITM・満期1週間〜1ヶ月>):GraniteShares公式サイト https://graniteshares.com/ (2026年7月21〜22日確認)- TQQY株価・利回り・規模(現在株価12.67ドル<2026年7月21日16:00終値>・52週高値19.83ドル・52週安値12.41ドル・純資産総額約662万ドル・発行済み株式数530,001株・TTM分配金利回り60.23%・過去12ヶ月分配金合計7.63ドル):stockanalysis.com(2026年7月21〜22日確認)。※参考:QQQの経費率0.20%- TQQY分配金推移(設定初期の特別分配2025年5月28日支払い0.77142ドル<基準日2025年5月23日・SEC 19(a)通知書によりうち94.57%がReturn of Capital=元本払戻金と開示>、および2026年1月2日0.1492ドル〜2026年7月10日0.0969ドルの週次分配):筆者ポートフォリオ管理DB・SEC 19(a)通知書(2026年7月確認)。※2026年1月2日0.1492ドル→2026年7月10日0.0969ドルの約35.0%減は筆者算出((0.1492−0.0969)÷0.1492×100=35.05%)。※2025年6月〜12月の分配額は本記事の一次情報収集対象外のため連続推移としては扱わない- 筆者保有実績(2026年7月17日スナップショット:保有7株・取得単価16.20ドル・評価損益-25.83ドル<株価12.51ドル時点>・円建て評価損益-3,477.93円・累積受取分配金16.66ドル<円建て2,636.74円>・トータルリターン率-4.7533%<為替込みの円建て>):筆者ポートフォリオ管理DB(承認済みデータ)。※ドル建て概算約-8%台は筆者算出(含み損25.83ドルと累積分配16.66ドルを取得原価113.40ドルで割った概算)- NISA成長投資枠の対象可否に関する一般的整理(TQQYの対象可否は確証が得られず断定しない・高分配型/週次分配/複雑なデリバティブ戦略型ETFは金融庁の除外基準により対象外とされるケースが一般的・ULTY/YSPYと同傾向・対象外である可能性が高いと見立て):筆者による一般論としての整理(最終的な対象可否は各証券会社の最新情報を要確認)- 第4章のプット売り損益例(100ドル・行使価格95ドル・プレミアム5ドル・急落70ドル・損失25ドル・差引20ドル)はすべて「※仮定計算例」であり、TQQYの実際の権利行使価格ではない

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趣味はカメラ、ランニング、読書。職業はシステムエンジニア。昔はリサーチハウスで企業調査、産業分析を行っていました。目標は投資で稼いでゆっくり生きる。資格はFP2級、証券アナリスト。投資対象は日本株、米国ETF、金、暗号資産、不動産。金融資産と実物資産の両輪で資産形成。

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