ども♪アラフィフの「人柱」ブロガーです。
2026年8月上旬、平日の朝8時でした。船橋の空はもう白く光っていて、蒸し暑い南風が、ゆるゆると吹いています。ゴミ出しを終えた私は、玄関を出てすぐの軒下(のきした)で、ふと足を止めていました。手には、朝食のときに注いだままの、冷たい牛乳のグラスがあります。
その軒下には、風鈴が二つ、並べて吊るしてありました。左は、小ぶりで薄いガラスの風鈴です。右は、去年の夏に手に入れた、ずっしりと重い鉄の風鈴です。二つは同じ軒下にぶら下がり、まったく同じ風を受けています。
ところが、鳴り方はまるで違いました。ガラスの風鈴は、ほんのかすかな風にも、ちりちりと落ち着きなく鳴り続けます。鉄の風鈴は、めったに鳴りません。その代わり、強い風がひとたび吹くと、ごーん、と低く長く響くのです。
同じ風を受けているのに、鳴り方がここまで違う。その当たり前の光景が、今日これから解剖する二つの銘柄と、ぴたりと重なって見えました。
今日の主役は、563A(グローバルX NASDAQ100・デイリー・カバード・コールETF)と、2865(グローバルX NASDAQ100・カバード・コールETF)です。二つとも、原資産(げんしさん=運用のもとになる資産)はNASDAQ100です。運用会社も、どちらもGlobal X Japanです。
つまり、受けている風はまったく同じ。それなのに、この3ヶ月弱で、二つの値動きはきれいに分かれました。
申し遅れました。私は証券アナリスト(CMA=証券分析の専門資格)とFP資格を持つ、アラフィフの兼業ブロガーです。超高配当カバードコールETFを、まるごと自腹で人体実験しています。
この新シリーズは、これまで1本につき1銘柄を解剖してきました。ですが今日は、初めての試みです。二つの銘柄を、同じ財布で実際に持った実績で、真横に並べて比べます。
なぜそんな面倒なことをするのか。理由は、563Aが2026年4月23日に上場したばかりで、単体の実績だけでは、まだ何も語れないからです。CMAとして仕組みを裁き、FPとして家計への意味へ翻訳する。命懸けの講義をお届けします。
同じ「カバコ」でも中身は別物――563Aと2865は、つまみの位置が正反対です

結論から書きます。563Aと2865は、同じNASDAQ100を土台にしながら、設計思想がほぼ正反対の商品です。名前がそっくりで、運用会社まで同じなので、つい「似たようなもの」と思ってしまいますよね。ですが、中身のつまみは、逆の方向に振り切られています。
なぜそう言い切れるのか。理由を説明します。カバードコール(原資産を保有しながら、その原資産のコールオプション=買う権利を売って収入を得る戦略)には、運用者がいじれるつまみが、大きく二つあります。一つ目は「どのくらいの間隔でコールを売り直すか」、つまり満期の長さです。
二つ目は「保有している資産の、どれだけの割合にコールをかぶせるか」、つまりカバー率です。この二つのつまみを、563Aと2865は、まったく逆に設定しています。
具体例で見ていきましょう。まず2865です。2865は、毎月ATM(アット・ザ・マネー=権利行使価格が、その時点の価格とほぼ同じ水準)のコールを売ります。しかも、保有している資産の100%に対して売り切ります。
カバー率100%固定という設計です。これが何を意味するか。上昇したときの値上がり益を、原則としてまるごと放棄して、そのぶんを分配金の原資に振り替えるという割り切りです。上を捨てて、毎月のインカム(定期的に受け取る収入)を取りにいく。実に潔い設計思想だと思いませんか。
次に563Aです。563Aは、1DTE(ワン・ディー・ティー・イー=残存1日で満期を迎えるオプション)を使います。毎営業日、翌日に満期が来るコールを売っては、また売り直す。この作業を延々と繰り返す戦略です。そして、ここが肝心なのですが、563Aは保有資産の全部にコールをかぶせません。
連動指数はNasdaq-100 Daily Covered Call Target Premium 15% Index(配当込み、円換算ベース)といい、目標利回りは年15%と定められています。年15%という目標に届かせるのに必要な分だけコールを売る。それが563Aのカバー率変動という設計です。
つまり、二つの銘柄の性格は、こう整理できます。
- 2865:上昇をまるごと捨てる代わりに、毎月確実にプレミアム(オプションを売って受け取る代金)を取り切る「取り切り型」
- 563A:目標の年15%に必要な分だけ売り、残った枠で上昇にもいくらか付いていこうとする「取り分調整型」
ここで、なぜ563Aがわざわざ1日満期などという短い玉を選ぶのか、疑問に思いませんか。理由は、オプションの時間価値(満期までの時間の長さから生まれる価値)の減り方にあります。オプションの時間価値は、満期が近づくほど加速して減っていきます。
満期まで1ヶ月ある時点で過ぎていく1日と、満期の前日に過ぎていく1日とでは、価値の目減りするスピードがまるで違うのです。売り手にとって、時間価値が減ることは利益です。1DTEとは、時間価値がもっとも激しく溶ける最後の1日だけを、来る日も来る日も刈り取り続ける戦略だと言えます。
理屈としては、実に合理的に聞こえますよね。ですが、毎日売り直すということは、毎日ポジションを組み替えるということでもあります。売買の回数は月次の比ではありません。
相場が跳ねた翌日に、どの水準でコールを売り直すかという判断も、毎日発生します。合理的な理屈の裏側には、必ず、運用の手数と執行の難しさが張りついているのです。
この違いが、実際の値動きにどう出たのか。それを自腹の数字で確かめるのが、今日の本題です。ちなみに、1DTEという戦略が国内のETFで採用されたのは、563Aが初めてです。国内初の実験台に、私も一緒に乗った形になります(白目)。
「年利15%」の看板を、まだ誰も検証していない――上場から3ヶ月強という現実

ここで、少し厳しい話をします。563Aについて出回っている「年利15%」という数字は、まだ誰も、1年を通して検証していません。当たり前です。563Aが上場したのは2026年4月23日、この記事を書いている2026年7月28日から数えて、まだ3ヶ月と少ししか経っていないのですから。
なぜ、この当たり前を強調するのか。理由は、CMAとして看過できない書かれ方が、あまりに多いからです。563Aを扱う記事を一通り読んでみると、そのほとんどが仕組みの解説に終始しています。1DTEの説明、カバー率変動の説明、信託報酬の比較。
そこまでは丁寧なのですが、最後の結論だけが妙に力強いのです。「買い」「三刀流ETF」といった威勢のいい言葉で締めくくられている。正論です。が、仕組みが理にかなっていることと、実際に年15%が出ることは、まったく別の話です。
具体例を挙げます。カバードコールのプレミアム収入は、相場のボラティリティ(価格変動の大きさ)に強く依存します。相場が凪いで変動率が縮んでいる局面では、同じコールを売っても、受け取れるプレミアムは痩せます。ここで目標の年15%に届かせようとすれば、売る量を増やすしかありません。
売る量が増えれば、それだけ上値を放棄する範囲が広がります。逆に相場が荒れて変動率が膨らめば、少ない量で目標に届き、上値の余地は残ります。
目標利回りを固定する設計とは、相場次第でカバー率が動く、つまり商品の性格そのものが局面ごとに変わるということです。これはCMA的な読み方であり、実際の運用がその通りに動いたかどうかは、開示を追い続けないと分かりません。断定は避けます。
そして、もう一つ大事なことがあります。目標利回りは、あくまで目標です。約束された利回りではありません。ここを混同すると、家計の設計を大きく間違えます。FPとして、この一点だけは強く申し上げておきます。
もう少しだけ踏み込みます。563Aが連動を目指す指数の名前には、Target Premiumという言葉が入っています。日本語にすれば「目標プレミアム」です。
指数の名前そのものが「年15%のプレミアムを目標にする」と宣言しているわけで、逆に言えば、その目標に届くかどうかは市場が決めるということでもあります。指数の設計者は、目標を掲げることはできても、市場が支払うプレミアムの水準を決めることはできません。
これは、決してケチをつけているのではありません。むしろ、目標を明示した指数設計は、透明で誠実だと私は評価しています。問題は、受け取る側の読み方です。
「年15%を目標とする設計です」という文と、「年15%がもらえます」という文は、まったく違う意味を持ちます。カバードコールETFで家計を痛める人の多くは、この二つの文を、同じ意味だと読んでしまった人なのです。
FPとして、実務的な言い方をします。生活費の一部をこの手の商品の分配金で賄おうと考えるなら、目標利回りではなく、実際に着金した1年分の合計を土台にして計算すべきです。
563Aの場合、その1年分どころか、確定した1回分すら手元にありません。土台の数字が存在しない商品で、家計の設計はできません。話は、それだけのことです。
だから私は、この記事で「563Aは買いです」とは書きません。書けないのです。その代わりに、私が実際に自腹で買って、3ヶ月弱ぶら下げてみた数字を、まるごと開示します。
人柱ブログにできるのは、結論を急ぐことではなく、記録を積むことだと思っていますので。
まずは並べて見る――563Aと2865のスペック比較表

数字の話に入る前に、二つの銘柄の基本仕様を、真横に並べておきます。ここを押さえておかないと、後半の実測データの意味が、半分しか伝わりません。
| 項目 | 563A | 2865 |
|---|---|---|
| 正式名称 | グローバルX NASDAQ100・デイリー・カバード・コール ETF | グローバルX NASDAQ100・カバード・コール ETF |
| 運用会社 | Global X Japan | Global X Japan |
| 上場日 | 2026年4月23日 | 2022年9月30日 |
| 連動指数 | Nasdaq-100 Daily Covered Call Target Premium 15% Index(配当込み、円換算ベース) | QYLD(米国上場のNASDAQ100カバードコールETF)を実質的に組み入れた円建てファンド |
| 信託報酬 | 0.2775% | 税込0.6275% |
| 目標利回り | 年15% | 公式の具体的な数値は本記事執筆時点で確認できていません |
| オプション頻度 | デイリー(1DTE=1日満期、国内初) | 月次 |
| カバー率 | 変動(年15%の達成に必要な分だけ売る設計。100%カバーはしない) | 100%固定(毎月ATMコールを売る) |
| 分配頻度 | 毎月10日決済 | 毎月 |
| 単元 | 本記事執筆時点で確認できていません | 1,000円 |
| NISA成長投資枠 | 対象外 | 対象外(デリバティブ使用のため) |
| 外国税額控除 | 本記事執筆時点で確認できていません | 対象 |
この表で、まず目を引くのは信託報酬でしょう。563Aは0.2775%、2865は税込0.6275%です。その差は0.35ポイントあります(※筆者算出)。同じNASDAQ100のカバードコールでありながら、保有コストは倍以上の開きがあるわけです。長期で持つほど、この差は効いてきます。
ただし、コストが安いから優れている、と即断するのは早計です。2865はQYLDという米国上場ETFを実質的に組み入れる構造で、その分の手間が乗っています。一方で外国税額控除の対象になるという、2865側の利点もあります。
563Aの外国税額控除の扱いは、本記事執筆時点で私自身が一次情報で確認できていないため、ここでは触れません。分からないことを分かったように書くのが、いちばん罪深いですから。
なお、NISA成長投資枠については、二つとも対象外です。デリバティブ(オプションなどの派生商品)を使う商品は、原則として成長投資枠から除外されるためです。
毎月分配のカバードコールETFを非課税で持ちたい、という願いは、この二つでは叶いません。ここは家計設計の前提として、最初に押さえておいてください。
私が実際に持っている数字を、そのまま開示します――563Aは+3.41%、2865は+2.86%

お待たせしました。私が自腹で持っている、二つの実測値です。2026年7月24日のスナップショット時点、すべて確定値です。
563A(グローバルX NASDAQ100・デイリー・カバード・コールETF)
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 購入日 | 2026年4月28日 |
| 保有口数 | 15口 |
| 取得単価 | 1,025円 |
| 購入金額 | 15,375円 |
| 評価単価(2026年7月24日時点) | 1,060円 |
| 評価損益 | +525円 |
| 累積受取分配金 | 0円 |
| トータルリターン率 | +3.4146%(≒+3.41%) |
2865(グローバルX NASDAQ100・カバード・コールETF)
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 購入日 | 2026年5月12日 |
| 保有口数 | 12口 |
| 取得単価 | 1,247円 |
| 購入金額 | 14,964円 |
| 評価単価(2026年7月24日時点) | 1,273円 |
| 評価損益 | +312円 |
| 累積受取分配金 | +116円 |
| トータルリターン率 | +2.8602%(≒+2.86%) |
563Aの購入日を見てください。2026年4月28日です。上場が4月23日ですから、上場からわずか5日で飛びついています。まさに人柱です(遠い目)。買った金額は15,375円、2865は14,964円。
どちらも1万5千円前後で、金額の規模をだいたい揃えてあります。この程度の金額なら、万一ゼロになっても人生は終わりません。生まれたての商品に自腹で乗るときの、私なりの作法です。
ここで、正直に申し上げておくべきことが三つあります。
一つ目です。保有期間が揃っていません。563Aは2026年4月28日から、2865は2026年5月12日からで、開始が2週間ずれています。ですから、二つのトータルリターンを単純に並べて「563Aの勝ち」と結論づけるのは、フェアではありません。
二つ目です。563Aの累積受取分配金は、0円と記録しています。実は、2026年7月10日が権利落ち日として私のポートフォリオ管理データベースに記録されています。ですが、証券会社のCSVで実際の入金額をまだ確認できていません。
当ブログは、実際に着金して金額が確定したものだけを分配金として数えます。理論値の掛け算で「たぶんこれくらいもらえたはず」と足し上げることは、絶対にしません。ですから、ここは0円のままです。
三つ目です。2865の累積受取分配金116円は、2026年6月10日決算分について、証券会社のCSVで確認できた実着金の確定値です。1口あたり11円の12口分に対応するものとして記録しています。
単純な掛け算の答えとぴったり一致しないのですが、その差がどこから来ているのかを、私はまだ一次情報で確認できていません。ですので、断定は避け、CSVで確認できた確定値をそのまま使います。なお、2865も2026年7月10日決算分の権利落ち日は記録済みですが、こちらも未確定のため計上していません。
つまり、二つとも、まだ数え切れていない分配金を抱えた状態の数字なのです。特に563Aは、分配実績が実質ゼロのまま、価格の値上がり益だけで+3.41%を出しています。「分配ゼロで値上がり益頼み」という組み合わせは、後の章でもう一度、数字を添えて触れます。
指数と比べて初めて見える――563Aは上昇の82%しか拾えず、2865は下落を6.01ポイント上回った

自分の損益だけを眺めていても、その商品が良かったのか悪かったのかは分かりません。比べる相手が要ります。そこで、配当込みのNASDAQ100と比べてみました。
代理指標には、QQQ(NASDAQ100に連動する米国上場ETF)のadj_close_price、つまり配当を再投資したベースの価格を使っています。この選択には、実は少々の紆余曲折がありました。
詳しくは記事末尾のソース一覧に書きましたが、当初は配当込みのNASDAQ100指数そのものを使おうとして、データの信頼性に問題があることが分かり、QQQの配当込み価格へ切り替えた経緯があります。人柱ブログは、データの出どころにも人柱を出します(汗)。
結果が、こちらです。
| 563A(保有期間:2026年4月28日〜2026年7月24日) | 2865(保有期間:2026年5月12日〜2026年7月24日) | |
|---|---|---|
| QQQ配当込み価格 | 656.83ドル→684.23ドル | 706.46ドル→684.23ドル |
| NASDAQ100配当込み騰落率 | +4.17% | ▲3.15% |
| ETF実績トータルリターン(含み損益+配当) | +3.41% | +2.86% |
| 指数との差 | ▲0.76ポイント(上昇の82%を捕捉) | +6.01ポイント |
※騰落率は筆者算出(563A=684.23÷656.83-1=+4.17%、2865=684.23÷706.46-1=▲3.15%、いずれもQQQの配当込み価格ベース)
さて、この表から何が読み取れるか。順番に解剖していきます。
まず563Aです。私が持っていた期間、配当込みのNASDAQ100は+4.17%上昇しました。それに対して563Aの実績は+3.41%。指数に0.76ポイント負けています。捕捉率で言えば、上昇の82%しか拾えなかった計算です。
ここが、563Aを検討している人にとって、いちばん大事な発見だと思います。563Aの説明で必ず出てくるのが「カバー率が変動するので、上昇にもある程度ついていける」という理屈です。
この理屈自体は正しい。実際、2865のようにカバー率100%固定であれば、上昇の捕捉はもっと厳しくなるはずです。ですが、「ある程度ついていける」の実測値は、この3ヶ月弱では8割どまりでした。全部は付いてこないのです。ここを「指数並みに上がる商品」と誤解して買うと、確実に期待を外します。
次に2865です。こちらは、正反対の景色が見えます。私が持っていた期間、配当込みのNASDAQ100は3.15%も下落しました。それなのに、2865の実績は+2.86%のプラスです。差は+6.01ポイント。指数が沈んでいる横で、2865だけがちゃんと浮いていました。
なぜこうなったのか。答えは、カバー率100%固定という設計にあります。毎月ATMのコールを、保有資産の100%に対して売り切る。この設計は、上昇局面では上値を捨てる弱点になりますが、横ばいや下落の局面では、受け取ったプレミアムがそのままクッションになるのです。
上を捨てた代償として、下でのクッションを手に入れている。教科書どおりの挙動が、私の口座の数字にきれいに出た形です。
ただし、このクッションには厚みの限界があります。受け取れるプレミアムは、あくまで有限の金額です。原資産が数十%規模で崩れるような場面では、プレミアムのクッションは早々に薄れ、下げをそのまま被ることになります。
カバードコールは、下落を和らげる装置ではあっても、下落を止める装置ではありません。今回の指数3.15%程度の下げは、クッションが十分に効く範囲だった、と読むのが正確です。
さらに、カバードコールには構造的な非対称性があります。上昇のときは上値を刈られ、下落のときはプレミアム分だけ緩和される。この形を長い年月にわたって繰り返すと、原資産が大きく上昇し続ける相場では、指数から着実に引き離されていきます。
NASDAQ100という、過去に強い上昇を見せてきた原資産にコールを売るということは、上昇のご褒美を、毎月のインカムに両替し続けるという選択を意味します。良し悪しではなく、そういう性質の商品だということです。
ただし、ここで浮かれてはいけません。CMAとして、注意点を三つ挙げておきます。
一つ目。二つの数字は、切り取っている相場の局面が違います。563Aの保有期間は指数が上がった局面、2865の保有期間は指数が下がった局面です。
上昇局面では上値放棄が少ない563Aが有利になりやすく、下落局面ではプレミアムを取り切る2865が有利になりやすい。局面が逆であれば、結果も逆に出た可能性が十分あります。この表は「2865の方が優秀」ということを意味しません。断定は避けます。
二つ目。QQQはドル建て、563Aと2865は円建てです。ですから、この比較には為替の変動が混ざり込んでいます。厳密な意味での超過リターンではありません。あくまで「同じ時期に、配当込みのNASDAQ100はこう動いていた」という目安として読んでください。
三つ目。期間がまだ3ヶ月弱です。この程度の期間で出た差を、年率に引き延ばして語ることには何の意味もありません。短い期間のリターンを年率換算する行為は、投資の世界でもっとも危険な化粧の一つです。
日次オプションは、下げにも敏感だった――週次で追いかけた6回分の記録

ここからは、二つの銘柄を毎週追いかけた記録を見ていきます。冒頭の風鈴の話を、そろそろ回収しはじめます。
| 日付 | 563A評価単価 | 563A評価損益 | 2865評価単価 | 2865評価損益 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年6月26日 | 1,090円 | +975円 | 1,283円 | +432円 |
| 2026年6月30日 | 1,122円 | +1,455円 | 1,307円 | +720円 |
| 2026年7月3日 | 1,107円 | +1,230円 | 1,299円 | +624円 |
| 2026年7月10日 | 1,089円 | +960円 | 1,294円 | +564円 |
| 2026年7月17日 | 1,061円 | +540円 | 1,268円 | +252円 |
| 2026年7月24日 | 1,060円 | +525円 | 1,273円 | +312円 |
まず全体の形を見てください。二つとも、2026年6月30日を山にして、そこから下り坂になっています。563Aの評価損益は6月30日の+1,455円が最高で、7月24日には+525円まで縮みました。2865も+720円から+312円へ落ちています。同じ風を受けているので、大きな方向は当然そろいます。ここまでは、想定どおりです。
問題は、下げ方の激しさです。2026年7月3日から7月17日までの2週間を取り出して、変化率を計算してみました。
- 563A:1,107円→1,061円で、▲4.16%(※筆者算出)
- 2865:1,299円→1,268円で、▲2.39%(※筆者算出)
差は1.77ポイントです(※筆者算出)。同じNASDAQ100を土台にしているのに、563Aの方がはっきり大きく下げました。
これをどう読むか。私の解釈はこうです。563Aはカバー率が変動し、100%はかぶせません。ということは、かぶせていない部分は、原資産の値動きをそのまま受けます。
上昇局面では、その「かぶせていない部分」が上値を拾ってくれる長所になります。ですが下落局面では、まったく同じ部分が、下げをそのまま食らう短所に反転するのです。上値を残すということは、下値も残すということ。この対称性を見落としてはいけません。
対する2865は、100%かぶせています。毎月受け取るプレミアムが、下げのクッションとして常時効いている構造です。だから下げが浅くなる。
実際、2026年7月17日から7月24日にかけて、2865は1,268円から1,273円へ戻していますが、563Aは1,061円から1,060円で、わずかに下げたままです。この直近1週間だけを見れば、戻りも2865の方が素直でした。
軒下のガラスの風鈴を思い出してください。かすかな風にも、ちりちりと鳴り続ける。一方の鉄の風鈴は、めったに鳴らない。日次で毎日オプションを売り直す563Aは、ガラスの風鈴のように、風の変化に敏感に反応しました。上にも下にも、です。
ただし、この観察は3ヶ月弱の、しかも1回の下げ局面だけを見たものです。これをもって「563Aは下げに弱い」と一般化するのは、まだ早すぎます。断定は避けます。
金額の絶対値でも、見ておきましょう。563Aの評価損益は、2026年6月30日の+1,455円から、7月24日には+525円まで縮みました。2865は同じ期間に、+720円から+312円です。
含み益のうち、消えた割合が大きかったのは563Aの方でした。もっとも、両方とも含み益の範囲内での増減であり、元本を割り込んだ場面は、私の保有分では発生していません。ここは正直に書いておきます。
そのうえで、一つだけ強調させてください。含み益が縮んだとき、それを埋め合わせてくれるのが分配金です。カバードコールETFの本来の設計は、価格が伸び悩む代わりに、毎月のインカムが積み上がっていくという構造でした。2865には、少額とはいえ、実際に着金した116円という積み上がりがあります。
563Aには、今のところ、それがありません。価格が下げ、しかもインカムの積み上がりがまだ見えない。この3ヶ月弱の563Aは、投資家にとって、いちばん我慢のいる時期を通っていたとも言えます。
そして、この章でもう一つ、どうしても書いておかねばならないことがあります。分配金の実績です。
- 563A:累積受取分配金 0円(2026年7月10日が権利落ち日として記録されているものの、実着金額は未確定)
- 2865:累積受取分配金 +116円(2026年6月10日決算分・実着金の確定値のみ)
🚨 ここは、この記事でいちばん重い事実かもしれません。「年利15%」を看板に掲げる563Aについて、私はまだ、分配金を1円も確定値として受け取っていないのです。3ヶ月弱の+3.41%というトータルリターンは、その全部が価格の値上がり益です。分配金の裏づけは、まだゼロ。この状態で「高分配ETFとして優秀」と評価するのは、どう考えても順序が違いますよね。
「まだ判断できないこと」を、正直にリストにします

さて、ここまで数字を並べてきました。ですが、人柱ブログとして、いちばん大事な章はここだと思っています。分かったことより、まだ分かっていないことを、正確に数え上げる。それが、生まれたての商品に自腹で乗った人間の責任だと考えています。
563Aについて、現時点で私が判断できないことを、正直にリストにします。
- 初回分配金の確定額:2026年7月10日の権利落ちは記録されていますが、実際にいくら着金したのか、証券会社のCSVで確認できていません。分配実績が実質ゼロの商品を、分配金で評価することはできません。
- 年15%という目標の達成可否:上場からまだ3ヶ月強です。1年を通した実績が出るまで、この数字は検証されません。
- 本格的な下落相場での挙動:私の保有期間中、563Aは上場来ほぼ右肩下がりの推移をたどりました。ですが、それは緩やかな調整であって、本格的な暴落は経験していません。暴落を経ていない商品の耐久性は、誰にも分からないのです。
- カバー率が実際にどう動いたか:目標利回り15%に必要な分だけ売る、という設計が、実際の相場でどのカバー率として現れたのか。この推移を私はまだ追い切れていません。
- 減配耐性:相場が荒れて原資産が下げたとき、分配金がどこまで維持されるのか。維持できずに減配するのか。1回も分配確定額を見ていない段階では、語りようがありません。
- 信託報酬差0.35ポイント(※筆者算出)が長期で効く度合い:563Aの方が安いことは確かですが、その差が実際のトータルリターン差として現れるには、年単位の時間が要ります。
2865についても、まだ分からないことがあります。
- 2026年7月10日決算分の実着金額:こちらも未確定です。累積+116円という数字は、あくまで6月決算分だけの姿です。
- 上昇局面での捕捉率:私の保有期間は、たまたま指数が下げた局面でした。指数が力強く上がる局面で、カバー率100%固定がどこまで置いていかれるのか。これは実測できていません。
ですから、読者のみなさんに、私からお願いしたいことがあります。もし563Aや2865を検討しているなら、今後は次の三点を、ご自身の目で継続的に確認してください。
| 継続観察ポイント | 何を見るか | なぜ重要か |
|---|---|---|
| 563Aの毎月10日決済分の分配金確定額 | 1口あたりいくら着金したか | 年15%という看板が、実額として成立するかの唯一の検証手段だから |
| 下落局面での分配金の増減 | 相場が荒れた月に減配するか | プレミアム収入は変動率次第で、分配は約束されていないから |
| 563Aのカバー率の推移 | 何%をかぶせているか | カバー率で、上値の伸びも下値の守りも変わるから |
この三点を確認せずに「年利15%」だけを見て買うのは、風鈴の音を聞かずに値札だけで選ぶようなものです。もっとも、私自身がその値札に飛びついた一人なので、あまり偉そうなことは言えませんが(汗)。
ついでに、よく聞かれることに先回りして答えておきます。「結局、563Aと2865のどちらか一方に絞るなら、どっちですか」という質問です。私の答えは、今の私は、絞りません、です。
理由は単純で、絞るための材料がないからです。上昇局面のデータしか持たない563Aと、下落局面のデータしか持たない2865。この二つを比べて片方を切り捨てるのは、晴れの日にしか使っていない傘と、雨の日にしか使っていない傘を比べて、どちらが良い傘かを決めるようなものです。
だから私は、両方をぶら下げたまま、次の局面を待ちます。次に相場が本気で崩れたとき、あるいは本気で駆け上がったとき、初めて二つの風鈴の音の違いが、意味のあるデータになるからです。それまでは、答えを保留したまま、数え続けるのが人柱の仕事だと思っています。
結論:今日はまだ、どちらが良いとは書けません。だから記録を続けます

軒下の風鈴に、話を戻します。
ガラスの風鈴と、鉄の風鈴。同じ軒下で、同じ風を受けています。ちりちりと敏感に鳴り続けるガラスの風鈴が優れているのか。めったに鳴らないが強い風に低く響く鉄の風鈴が優れているのか。その答えは、風鈴の側ではなく、その日の風が決めます。
563Aと2865も、まったく同じです。上昇の局面では、上値を残す563Aの設計が効きます。下落や横ばいの局面では、プレミアムを取り切る2865の設計が効きます。
実際、私の実測でも、指数が上がった局面を切り取った563Aは指数の82%を捕捉し、指数が下がった局面を切り取った2865は指数を6.01ポイント上回りました。どちらが優れているかではなく、どちらの局面が来るか。それが全てだったのです。
そのうえで、今日の私の結論を、はっきり書きます。
私は、563Aについて「買い」とも「見送り」とも書きません。まだ答えを出せる材料が、決定的に足りていないからです。
分配実績が実質ゼロの商品を、高分配ETFとして評価することはできません。本格的な暴落を経ていない商品を、下落耐性がある商品として推すこともできません。上場から3ヶ月強で「年利15%の三刀流ETF」と結論づけるのは、CMAとして、私にはどうしてもできないのです。
一方で、否定もしません。信託報酬0.2775%という水準は、2865の税込0.6275%と比べて明確に安い。国内初の1DTE戦略という着眼点も、机上の理屈としては筋が通っています。筋の通った設計と、実際に出る成果とを、きちんと分けて見る。そのために私は、自腹で15口を買って、毎週数えているのです。
だから、今日は答えの代わりに、約束をします。私は563Aの初回分配金が確定した日に、その金額を1円単位で開示します。相場が本格的に崩れた日には、二つの風鈴がどう鳴ったかを、同じ表で並べて報告します。
1年後、年15%という看板が実額でどうなったのかを、この口座の数字で答え合わせします。威勢のいい結論より、地味な記録の方が、あなたの資産を守ります。
冷たかったはずの牛乳は、書いているうちにすっかりぬるくなりました(涙)。それでも軒下では、ガラスの風鈴が今日も落ち着きなく鳴り、鉄の風鈴は黙って風を待っています。この二つの音を、私は来月も、その次の月も、数え続けます。人柱の続報は、この記録で必ずお届けします。
📌 免責事項本記事は情報提供を目的としており、投資勧誘を目的としたものではありません。記載の数値は特定時点の実績であり、将来の成果を保証するものではありません。563Aは上場から3ヶ月強と運用実績が浅く、分配実績もほぼ確認できていません。カバードコールETFは価格変動・分配金の増減・元本毀損のリスクがあります。563A・2865とも原資産はNASDAQ100(円換算ベース)であり、外貨建資産の円換算価値の変動による為替リスクが存在します。また、オプション取引を用いる商品であるため、取引相手方の信用リスクも一般的に存在します。563Aは上場からまだ日が浅く、出来高やスプレッドといった流動性面のリスクについても本記事執筆時点では十分な検証ができていません。投資判断はご自身の責任において行ってください。なお、筆者は本記事で取り上げる563Aおよび2865を実際に保有しています。本記事には広告(アフィリエイトリンク)を含む場合があります。
参考一次情報ソース一覧– 563A基本情報(正式名称「グローバルX NASDAQ100・デイリー・カバード・コール ETF」・運用会社Global X Japan・上場日2026年4月23日・連動指数「Nasdaq-100 Daily Covered Call Target Premium 15% Index」<配当込み、円換算ベース>・信託報酬0.2775%・目標利回り年15%・オプション頻度デイリー<1DTE、国内初>・カバー率変動・分配頻度<毎月10日決済>・NISA成長投資枠対象外):本記事執筆にあたり収集した承認済みスペックデータセット。※売買単位(単元)および外国税額控除の対象可否は本データセットに含まれず、一次情報で確認できなかったため、本文では「本記事執筆時点で確認できていません」と明記し推測数値は不記載- 2865基本情報(正式名称「グローバルX NASDAQ100・カバード・コール ETF」・運用会社Global X Japan・QYLD<米国上場ETF>を実質的に組み入れた円建てファンド・信託報酬税込0.6275%・オプション頻度月次・カバー率100%固定<毎月ATMコール売り>・分配頻度毎月・単元1,000円・NISA成長投資枠対象外<デリバティブ使用のため>・外国税額控除対象):本記事執筆にあたり収集した承認済みスペックデータセット。※上場日は本データセットに正確な日付がなく一次情報で確認できなかったため、本文では断定を避け「既に流通している既存銘柄」として扱った。※公式の目標利回りの具体的数値も本データセットになく、断定を避けて不記載- 筆者の563A保有実績(購入日2026年4月28日・15口・取得単価1,025円・購入金額15,375円・評価単価1,060円<2026年7月24日時点>・評価損益+525円・累積受取分配金0円・トータルリターン率+3.4146%):筆者ポートフォリオ管理DB(承認済みデータ、analysis-lab purchase_history/portfolio_snapshot、2026年7月24日スナップショット、確定値)。※2026年7月10日が権利落ち日としてDBに記録されているが実際の入金額は未確定(is_manual_confirmed=0)のため、累積受取分配金は0円のまま計上し、理論値の乗算による推計は行っていない旨を本文第5章で明記- 筆者の2865保有実績(購入日2026年5月12日・12口・取得単価1,247円・購入金額14,964円・評価単価1,273円<2026年7月24日時点>・評価損益+312円・累積受取分配金+116円・トータルリターン率+2.8602%):筆者ポートフォリオ管理DB(承認済みデータ、analysis-lab purchase_history/portfolio_snapshot、2026年7月24日スナップショット、確定値)。※累積受取分配金+116円は2026年6月10日決算分(1口あたり11円×12口ベース)について証券会社CSVで確認済みの実着金確定値のみを計上。単純な乗算値と一致しない要因は一次情報で確認できず、本文では断定を避けて確定値をそのまま使用。※2026年7月10日決算分も権利落ち日はDBに記録されているが未確定のため不計上- 週次価格推移6回分(2026年6月26日/6月30日/7月3日/7月10日/7月17日/7月24日の563A・2865各評価単価および評価損益):筆者ポートフォリオ管理DB(承認済みデータ、analysis-lab portfolio_snapshot)。※2026年7月3日→7月17日の2週間の変化率(563A=1,107円→1,061円で▲4.16%、2865=1,299円→1,268円で▲2.39%、差1.77ポイント)はいずれも筆者算出- NASDAQ100配当込み騰落率の比較データ(563A保有期間2026年4月28日〜7月24日:QQQ配当込み価格656.83ドル→684.23ドル=+4.17%/2865保有期間2026年5月12日〜7月24日:706.46ドル→684.23ドル=▲3.15%):analysis-lab market_ohlcv_daily(QQQのadj_close_price、配当再投資込み、2026年7月28日付で正式収録)。※騰落率および指数との差(563A▲0.76ポイント=上昇の82%を捕捉/2865+6.01ポイント)はいずれも筆者算出。※QQQはドル建て、563A・2865は円建てのため、この比較には為替変動の影響が含まれ厳密な超過リターンではない旨を本文第6章で明記- 信託報酬差0.35ポイント(2865の税込0.6275%-563Aの0.2775%):筆者算出- データ品質メモ:配当込みNASDAQ100の指標として当初^NDXTの採用を検討したが、5年分の検証により、yfinance経由で取得した^NDXTのデータが^NDX(価格指数)比で振幅を系統的に1.19〜1.51倍に増幅していることが判明した。これは一時的な不具合ではなく、取得当初から一貫して観測される事象である。そのため、配当込みNASDAQ100の代理指標としてQQQのadj_close_price(配当再投資込み)を採用し、analysis-lab DBのmarket_ohlcv_dailyにも正式に追加した

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